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わたしの本棚122夜~「レースの村」

 紅茶とマードレーヌを用意して読みたくなるような、お菓子缶のような素敵な装丁に、小説の不思議な内容を彷彿させ、うっとりしました。著者の片島麦子さんは、第28回大阪女性文芸賞佳作受賞者で、受賞作の「透明になった犬の話」を含む4つの短編小説からなっています。どれも不思議な設定なのですが、読後感が良くて、はかなさと切なさと哀愁がありました。帯は、翻訳家で早稲田大学教授の松永美穂氏で「幽霊の世話する人々、女性だけの村、姿が透明になる犬・・・。とても不思議なのに、どこか懐かしい光景。日本のどこかに、こんな場所があるかもと思えてくる。豊かな発想から物語を紡ぎだす、新しい語り部の誕生だ!」 

☆「レースの村」 片島麦子著 書肆侃侃房 1500円+税

 大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人と出会う・・・「幽霊者」女性だけの村で育った卯月。カナさんの秘密の儀式を目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう・・・「レースの村」バイト先の店長の妻の死因を知った杏子・・・「空まわりの観覧車」透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子と過ごす日々・・・「透明になった犬の話」

 どれも読後感が儚く、切ないです。ふわっとした軽さのなかに、喪失と哀愁があり、希望が見え隠れして・・なんともいえない余韻でした。

 わたしが尾川代表に誘っていただき、大阪女性の仕事を手伝いだしたのが、ちょうど第28回からで、最初の受賞作は片岡真氏の「ゆらぎ」、佳作が「透明になった犬の話」でした。当時、まだご存命で、お元気だった選考委員の津島佑子氏がこの作品を「作品世界をイマジネーションで作り上げて、そこに人間を配した、フイクションの力を信じようとしている小説」と評され、黒井千次氏が「これから伸びていく可能性を感じる」と評されていました。

★片島麦子★

1972年広島県生まれ。広島女子大卒

第28回大阪女性文芸賞佳作受賞「透明になった犬の話」(選考委員 ・黒井千次、津島佑子)

第4回パピルス新人賞特別賞 第1回ワルプルギス賞受賞

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