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芦生の森(京都) ♣マイナー登山道を往く♣(0006)

京都大学の研究林。一般登山の入山規制があるため静かで豊かな森歩きが楽しめます。

 

<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。

マイナー登山道を往く 登山 トレッキング アウトドア 芦生の森

<概要>
芦生の森 (あしうのもり)
京都府南丹市美山町。
正式には「京都大学 芦生研究林」。京都大学における自然環境等の総合的な学術研究・実地研修を目的として管理されている。
入山には所定条件があり申請が必要、また公共交通機関を利用してのアクセスも限定される。

 

<”芦生の森”の魅力>
第1に、日本古来の豊かな自然を感じられる雰囲気があります。
ブナ、ミズナラ、コナラやカシに代表されるような広葉樹など多様な樹木があります。京都大学研究林として一般利用に制限があるため、開発やオーバーユースなどの問題が少なく、日本の森が古来に有していた独特の雰囲気を目に触れ肌で感じることができるのではないでしょうか。

第2に、静かな森の環境と空気を楽しむことができます。
一定の入山規制があるため、登山者が押し寄せることもあまりありません。非常に広大(約4200ha)でその中に人は居住していません(研究者の方は別)。”原生”という言葉が似合う森と思われます。森を歩く自分たち以外の人の気配を感じることがほとんどありません。

 

<登山コース>

芦生の森 登山 トレッキング アウトドア マイナー登山道を往く
ケヤキ坂

今回はツアーに参加しての山行(「下谷・メタセコイアコース」)でした。
研究林のケヤキ坂まで専用車両で上がり、そこから長治谷まで歩き、さらにメタセコイアの並木道へ向かいます。

晩秋・初冬の澄んだ空気

ケヤキ坂から出発です。このときは11月下旬で直前に降雪があり、雪が少々、残っておりました。ケヤキ坂から長治谷の間は標高もあるので、すでに紅葉は盛りを過ぎ、冬枯れが始まっている頃でした。
そのためか、より静かでちょっとキーンとした冷たい空気が森の中に漂っている印象です。

カツラ

今回のルートは研究林の中で研究のための車両も通行する道でしたので、土の道ではありますが、とても歩きやすかったです。
またとくに難路や危険箇所もありません。起伏も少ないですので、森林散策という感覚で歩ける環境でした(コースにより道の状況は異なります)。

長治谷あたりの研究施設

長治谷のあたりで昼食をとり、後半のメタセコイアの並木道へ向かいます。

メタセコイアの枝
メタセコイアの実

森の道の両側にメタセコイアがオレンジ色に輝き、青い空によく映えていました。メタセコイアの巨大さとその鮮やかな色彩に目を見張り、声を上げました。

まるで日本とは別世界のような風景です。メタセコイアは日本原生の樹木ではなく、研究目的で植樹されたものです。そのため、トレッキングの後半は日本古来の森の雰囲気とはまた異なる景観を楽しむことができます。

メタセコイアの並木道を1時間弱で歩き終えて、”芦生の森”のトレッキングは終了です。

 

<行程表>
ケヤキ坂⇒ 長治谷(150分)⇒※車両移動⇒ メタセコイアの並木道(60分)
歩行時間/ 3時間30分~4時間くらい

<国土地理院地図>
美山町芦生

<登山コースの補足>
芦生研究林内の所定のルート以外を歩くことはできません。
個人による一般入山申請の場合と、認定されたガイドツアーによる場合とでは、入山できる範囲が異なります(ツアーによる入山範囲の方が広い)。
芦生研究林への個人での入山申請については所定の条件がありますので、管理機関のウェブサイト「京都大学芦生研究林」をご確認ください。
芦生研究林は冬季は閉鎖されます。

<お天気情報>
京都府南丹市 (tenki.jp)

 

<売店等>
芦生研究林内には売店や土産物店などはありません。

<お食事処>
芦生研究林内には食堂やレストランなどはありません。

<日帰り温泉など>
美山町自然文化村「河鹿荘」 (※公式サイト)

<山小屋等宿泊施設>
美山町に複数の宿泊施設があります。
※参考リンク先の「美山ナビ」をご覧ください。

<名産品>
丹波栗
丹波黒豆

<アクセス>
JR山陰本線(嵯峨野線)「日吉」駅から南丹市営バスを乗継ぎ(市営バス美山園部線と芦生線)、「芦生」バス停に下車。
市営バスの本数は非常に限られていますので事前によくご確認ください。
美山町内の芦生研究林に近い宿泊施設によっては駅と宿泊施設との間の送迎サービスを実施しています。
芦生研究林の認定ガイドツアーに参加する場合は、研究林までの間の送迎を実施しています。詳細は各ツアーをご確認ください。

<そのほかの補足>
京都市内から美山町への直行バスが季節運行されています(京阪京都交通のウェブサイトを参照)。
芦生研究林の土地は京都大学の所有地ではなく借地権設定で管理されています。近年、その期間は延長されましたが、この状態がいつまでも継続するわけではなさそうです。
面積/約4200haは、JR山手線の内側の3分の2程度の広さになるそうです。

 

<私的な雑感>
とても静かな森。そして人の手があまり入っていない”原生”を感じる自然という趣でしょうか。

といいましても、研究林となったのは大正時代になってからであり、それ以前は人の手が入り、林業等でいろいろな利用がされておりました。まったくの人跡未踏の原始林というわけではありません。
しかしそこから百年の刻を経て、日本の古来の森の姿へ戻っていったのではないでしょうか。芦生の森は、日本でも有数の降雨量があるそうですので、その分、復元力が強かったのかもしれません。

濃密な自然や深い森という”秘境”の雰囲気はありませんが、”森閑”という言葉に相応しい場所ではないかと感じました。

今回は秋。晩秋や初冬という時期ではあったのですが、春や夏にはまた違った美しい景色と自然を楽しむことができそうです。
咲き誇る花々、瑞々しい新緑、恋の季節を迎えてさえずる鳥たち、冬から目覚めて動き出す虫たちなどなど。

とにかくアクセスがしづらい。公共交通機関で行くにはなかなかハードルが高そうです。しかしそのことでかえって、人の足が入りにくくなるために、この森の自然と雰囲気を維持できている所以ではないでしょうか。

美山町の特定の宿泊施設では認定のガイドツアーを実施しており、その場合は”芦生の森”まで送迎してもらえます。また、自分だけでは気付かないような、自然や環境に関する様々な説明もしていただけるので”芦生の森”のことをよく理解できるのではないかなと思われます。

私が今回、行ったときは落葉樹の葉も落ち、動物の気配もほとんど感じることのない冬に近い寂しげな雰囲気でしたが、逆に”しん”とした落ち着いた森の佇まいを肌で感じる風情も、これはこれでよかったなと感じました。
また、森を歩く自分たち以外に人の営みを感じることも少なく、静かな森のなかで自分の五感だけをよく感じ取ることができるとても良い体験になったなとの感想です。

「ガッツリと山を登りたい!」ということではなく、静かで豊かな森の雰囲気を楽しみたいという場合には、とてもよい場所だなーという印象です。

 

<山のお友>

●ひとくちすあま
ここでは何度も繰り返しになりますが、個人的には餅菓子が好きです。
いわゆる小豆あんの餡子も好きなのですが、それだと長時間の山行の場合は甘すぎて口が飽きてしまうこともあります。そんなときでも餅だけの”すあま”ですと味に飽きが来ずにけっこう食べ続けることができます(ときには数日間に渡って)。
また、こちらの”すあま”は一口サイズなので、気軽にパクッと口に入れて、またさっと歩き出すことができるのが、個人的にはたいへん便利に感じています。


<備考>
「芦生の森」ガイドツアー
・美山町自然文化村 (※公式サイト)
・芦生 山の家 (※公式サイト)

<参考リンク>
美山町観光情報サイト「美山ナビ」 (※公式サイト)
*各種パンフレット等あり。
京都大学芦生研究林 (※公式サイト)
南丹市営バス (南丹市)
南丹警察署 (※公式サイト)

 

<バックナンバー>
バックナンバーはnote内マガジン「マイナー登山道を往く」にまとめております。

0001 「石砂山」
0002 「三峰山(丹沢)」
0003 「最乗寺から明神ヶ岳(箱根)」
0004 「秩父御岳山」
0005 「都留アルプス」

 

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(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
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(2022/10/31 上町嵩広)