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涸沢カール △登山の魅力△(0024)

”日本一”とも称される紅葉の景色が見事(らしい…直に見てませんが)。穂高連峰の麓に広がる氷河地形であるカールは”日本三大カール”にも数えられる。
(本記事/ 文字数:約5500字、読了:約11分)

《引用》 「紅葉の涸沢カール」
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Autumn_Karasawa.jpg
Attribution: Clocs,N, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

<涸沢カールの魅力>

(1)穂高連峰の「モルゲンロート」
穂高連峰が朝日を浴びて赤く染まる「モルゲンロート」は晴れていれば、いつでも見ることができます。山肌全体が朝日とともに刻一刻と変化しながら鮮やかに赤く染まる様子は深く嘆息させられます。とくに涸沢の場合、カールの底から遮るものがない穂高全体がパノラマに広がっている風景はダイナミックです。
(2)紅葉の名所
カールの底から山腹にかけて赤と黄色に染まる紅葉は日本一と評されることもあります。ちなみに、個人的な話ですが、私はまだ一度も見たことがありません…何回か行きましたがすべてタイミングがずれていました(友人は何度もベストタイミングで見れているのですが)。
平年ですと、9月末から10月初めが見ごろとされていますが、その年の天候次第でけっこうバラつきますし、いったん全面紅葉するとあっという間に終わってしまいます(もう、見るのはあきらめました…)。


<概要>

涸沢カール (からさわかーる)
所在地: 長野県松本市
穂高連峰の東側に形成された、日本有数の氷河地形”カール”(圏谷)。
上高地から奥穂高岳や北穂高岳へのアプローチの経由地・拠点となっている。
ナナカマドやダケカンバの紅葉が有名。天候条件に恵まれれば、穂高連峰山稜の冠雪とともに三段紅葉を目にすることもできる。
テント泊の大人気スポットでもあり、夏や紅葉の時期にはカール底を埋め尽くすほどの色とりどりのテントが並ぶ。一説には1000にも及ぶという。


<登山コース>

※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
●上高地からのピストン(往路のみ)
もっともメジャーで体力面・技術面で難易度は高くない一般的なルート。
上高地バスターミナル→ 明神分岐(60分)→ 徳澤(60分)→ 横尾(70分)→ 本谷橋(60分)→ Sガレ(70分)→ 涸沢カール(50分)
※テント泊装備での歩行時間ではありません。
コースタイム/ 約6時間弱
標高差/ 約800m (上高地バスターミナル:1505m、涸沢カール(涸沢ヒュッテ周辺):2309m)

[登山道の特徴]

上高地バスターミナルから横尾まではほぼなだらかな道であり、おおむね梓川に沿って歩きます。
横尾から先、横尾大橋を渡ってからが山道になります。
上高地から横尾まではハイキング感覚で行けますが、横尾から先は登山装備が必要です。
横尾からはロッククライミングの有名な外岩である屏風岩を左手にぐるりと回りこむようにして涸沢カールに入っていきます。
本谷橋を過ぎるとガレ場が何度も現れます。過去に何回か落石事故が起きているので素速く通過した方が安全安心です。
本谷橋と涸沢カールの間は狭い道で交互通行も頻繁に起きるため渋滞がよく発生します。帰路のバスの時間を考えて余裕をもってスケジュールを組んだ方が安心です。
横尾から先へ涸沢カール方面に進む場合、長野県の条例で登山届が必要になります。
●水場やトイレなど
水場は徳沢、横尾、涸沢ヒュッテにあります。
トイレは上高地バスターミナル、河童橋、明神、徳沢、横尾、涸沢にあります。

[難易度・危険個所など]

とくに大きな難所や危険個所などはあまりありません。
本谷橋から涸沢にいたるルートは落石事故も過去に起きていますので休憩など長居はあまりせずに通過することが望ましいです。
前述していますが、同様に上記区間は登山道も狭く登山者の往来による交互通行で渋滞が発生しやすいです。
●信州 山のグレーディング
[上高地→涸沢] 
体力度: 5(1→10) 
難易度: B(A→E)

[アクセス]

●往路 ※帰路は逆
上高地バスターミナルから徒歩
《参考》
●上高地までのアクセス
高速バスで東京(新宿、東京や竹橋など)から直通あり(夜行・昼行)。
JR北陸新幹線「長野」駅から高速バスあり。約2時間40分。
JR中央本線「松本」駅から鉄道と路線バスの乗り継ぎで1時間40分~2時間程度。「松本」駅から松本電鉄「新島々」駅までいき「上高地バスターミナル」行きのバスに乗り換え。
松本バスターミナルと上高地バスターミナルを直通するバス路線「ナショナルパークライナー」があります。約1時間40分。往路のみで本数は少なく事前予約制です。
※所要時間はいずれも道路事情等によるので目安です。
●上高地から松本駅方面への路線バス
高速バスではない場合でも松本駅へアクセス(「新島々」で鉄道に乗り換え)するための上高地発の路線バスは事前予約制になります。詳細はバス会社(アルピコ交通)のwebサイトをご確認ください。

[国土地理院地図]

「涸沢」(長野県松本市)

<こんな方にオススメ>

(1)上高地のハイキングからトレッキングにステップアップしたい
(2)穂高連峰の雄大な景観を眺めてみたい
(3)日本一とも称される紅葉を鑑賞したい


<関連情報>

[売店等]

上高地バスターミナルから横尾まではいくつか山小屋があり、売店を併設しているところもあります。
河童橋周辺にはホテル、レストランやショップも多くあります。

[日帰り温泉など]

小梨の湯 ※公式サイト 温泉ではない
上高地温泉ホテル  ※公式サイト
湯の華銭湯 瑞祥 松本館 ※公式サイト 松本駅/温泉を運送して利用

[お食事処]

山小屋では軽食を提供しているところもあります。
涸沢ヒュッテは”おでん”が有名です。徳澤園はソフトクリームが有名です。
河童橋周辺にはレストランが複数あります。

[山小屋などの宿泊施設]

涸沢ヒュッテ ※公式サイト
涸沢小屋 ※公式サイト
横尾山荘 ※公式サイト
徳澤園 ※公式サイト
徳沢ロッヂ ※公式サイト

[付近の山]

北穂高岳
奥穂高岳
槍ヶ岳
西穂高岳
霞沢岳
焼岳
蝶ヶ岳
※穂高連峰の山岳(上記でいいますと北穂高岳~霞沢岳)はいずれも事前に岩稜登山の経験を積んでおくことが望ましいです。初心者・初級者向けの山ではありません。
※登山時は長野県の条例により登山届提出義務・ヘルメット着用推奨です。

[名産品]

「ベイクドチーズタルト」 (五千尺ホテル)
「信州 完熟りんごのアップルパイ」 (トワサンク)
「上高地の四季」(フランボワーズケーキ) (上高地ホテル白樺荘)
野沢菜漬け

[お天気情報]

穂高岳 (山の天気/tenki.jp)

[そのほか]

近年、上高地のテント場にはクマの目撃情報も寄せられているのでご注意ください。
徳沢にある山小屋「徳澤園」は”氷壁の宿”として知られ、川端康成の小説”氷壁”ゆかりの宿としてたいへん人気です。予約はすぐに埋まるため早く予約した方がいいと思われます。
横尾より上高地寄りの山小屋やホテルはお風呂付の施設もありますので各施設の情報をご確認ください(石鹸等使用不可のところもある)。
涸沢ヒュッテでは常設テントの提供もしていますが、すぐ予約が埋まってしまうのでお早く予約した方がいいと思われます。
涸沢カールでテント泊をする場合、テントの下に設置するパネルの貸し出しもありますが、数が足りなくなることもあるので早くテント場に到着した方がいいかと思います。
上高地で入山期間に開催される「開山祭」「ウェストン祭」は注目も大きくニュースで取上げられることもよくあります。また9月初旬には「涸沢フェスティバル」というイベントが定期的に開催されています。


<私なりの楽しみ方>

涸沢カールの心に残る思い出はなんといってもその雄大な景色です。カールの中に入り仰ぎ見れば、眼前いっぱいに穂高連峰のパノラマが広がっています。さっと両手を開いてもそこからはみ出そうなほどのインパクトです。

カールとそこに広がる景色は朝昼晩いつみても素晴らしいの一言。朝はモルゲンロート、昼は青空をバックに圧倒的な岩壁をもつ穂高連峰、そして夜は満天の星空に色とりどりに光るテントの眺めもまた格別です。

あまり山慣れしていない友人らと、穂高連峰に登るのは無理としても涸沢までならば行けるよ、ということで一緒に行ったことがあります。あいにく本谷橋を過ぎたあたりで激しめのにわか雨が降り、同行者は声も出ないほど疲弊してようやく宿に着きました。ストーブに当たって人心地ついたところで雨もちょうど止んだので星空のもと自炊の温かい食事でお腹を満たし、翌朝は快晴のなかモルゲンロートを拝むことができました。同行者も”終わり良ければ総て良し”ということで満足してくれたようでした(たぶん…)。

涸沢カール内にある山小屋は2軒です(稜線上の山小屋は除きます)。どちらもそれぞれの良さがあると思います。個人的には、おでんを食べるなら涸沢ヒュッテ、アイスクリームを食べるなら涸沢小屋という選択でしょうか。
おでんもアイスクリームもどちらも宿泊しなくても食べられますが。

行程としては、上高地バスターミナルから6時間弱で800mを上がりますので比較的ゆったりとしたペースで上がれます。そのため登山初級者であってもよほど体力に不安がある場合を除けば、上高地から涸沢まで問題はないかと思います(もちろん登山用装備は必要です)。難所や危険個所はあまりありません。しいていえば、前述しましたが、道が狭いところがありますので、交互通行や追い越し登山者との接触に気を付けることでしょうか。

もちろん、上高地の大正池や河童橋からの風景も素晴らしく、そこで帰ってもいいのですが、日程や体力に余裕があるのであれば、涸沢までの行程を組んでみることをオススメします。

そんなわけで「涸沢カール」は、日本の登山者に「山の風景で素晴らしいところを5つ挙げてください」と質問すれば、そのうちのひとつとして多くの人が名前を出すのではないでしょうか。個人的には「日本三景」に入っていてもいいのではないかと勝手に考えております。

 

<備考>

●上高地の天気
※上高地の天気を参照する場合、一般の天気予報サービスでは住所が松本市のため松本市中心部にフォーカスされていることがあります。そのような場合は、周辺の安曇野市、立山町、飛騨市や朝日村などの天気予報も参考にした方がいいかと思われます。
●上高地周辺の登山道情報等
長野県 山岳情報 (長野県)
岐阜県警察 山岳情報 (岐阜県)
富山県警察 山岳情報 (富山県警察)
松本警察署 上高地警備派出所 (上高地・公式サイト)
松本警察署 (長野県警察)
信州 山のグレーディング (長野県)

<参考リンク>

上高地・公式サイト ※公式サイト
上高地ビジターセンター (環境省)
上高地インフォメーションセンター (上高地・公式サイト)
中部山岳国立公園 (環境省)
高速バス「さわやか信州号」 (アルピコ交通)
高速バス「まいにちアルペン号」 (まいたび/毎日新聞旅行)
アルピコ交通 ※公式サイト
山と高原地図「40.槍ヶ岳・穂高岳 上高地」 (昭文社)
東京医科大学 上高地診療所 (東京医科大学病院)
日本大学医学部 徳沢診療所 (上高地・公式サイト)
手荷物預かり所 (上高地・公式サイト)

 

<バックナンバー>
バックナンバーはnote内マガジン「山の魅力」にまとめております。

0023 金峰山
0022 三つ峠
0021 男体山(日光)
0020 浅間嶺と浅間尾根
0019 幕山
0018 一ノ倉沢/谷川連峰(冬季)
0017 北八ヶ岳周遊(冬季)
0016 城ヶ崎海岸
0015 苗場山
0014 天狗岳(八ヶ岳)
0013 燕岳~常念岳
0012 大杉谷~大台ヶ原
0011 北岳
0010 雲取山
0009 御前山(奥多摩)
0008 大楠山
0007 飯盛山
0006 赤城山
0005 大山(丹沢)
0004 三頭山
0003 宮之浦岳
0002 雨飾山
0001 編笠山

 

<ご留意点>
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(6) 不定期更新です。 毎月一度を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2022/07/20 上町嵩広  改訂:2024/07/21)