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塔ノ岳(丹沢) △登山の魅力△(0030)

通称”バカ尾根”と呼ばれる大倉尾根の登りが有名。神奈川県・丹沢山塊の筆頭格的山岳。
(本記事/ 文字数:約5400字、読了:約11分)


<概要>

山岳名: 塔ノ岳 (とうのだけ)
所在地: 神奈川県秦野市、愛甲郡清川村、足柄上郡山北町
丹沢山塊のなかでもアクセスの利便性や登り応えなどから人気の山。
標高は約1491m。
「大倉」バス停ちかくの登山口との標高差(約1200m)から、富士山登山の予行練習としても利用されることが多い。

<塔ノ岳の魅力>

(1)大倉尾根(通称”バカ尾根”)の登り応えはなかなか楽しめます(かな…)。
「大倉」バス停から山頂までの標高差は約1200m。しかも序盤を除けばほとんど直登のような一本調子の上り坂です。そのうえ長い階段状の道が連続します。おそらく、初めて登る方はたいがいは「なんだコレ?」と呆れるのではないでしょうか。しかしその登り応えを活かして各種のトレーニングにも利用されています。
(2)山頂の眺望に恵まれています。
とくに富士山、秦野市街と海岸線とその向こうの相模湾の景色はとても見応えがあります。塔ノ岳は海岸線に近く、低地からいきなりズドンと隆起したような山のため、周囲にそれほど高い山はないのでぐるっと一面をパノラマ風景を見渡すようなシチュエーションとなっています。


<登山コース>

※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
(1)大倉尾根コース
もっともメジャーなルート。登山口から山頂へ向かってほとんど直登で尾根を上がっていく。大倉登山口と山頂のピストン。
「大倉」バス停→ 見晴茶屋(60分)→ 堀山の家(60分)→ 天神尾根分岐(30分)→ 花立山荘(30分)→ 金冷シ(20分)→ 塔ノ岳・山頂(30分)→ 金冷シ(20分)→ 花立山荘(15分)→ 天神尾根分岐(20分)→ 堀山の家(15分)→ 見晴茶屋(40分)→ 「大倉」バス停(50分)
コースタイム/ 6時間30分程度
標高差/ 1200m程度
(2)表尾根縦走コース
ヤビツ峠から丹沢・表尾根上の複数の連続するピークを越えて塔ノ岳を目指す縦走ルート。
「ヤビツ峠」バス停→ 表尾根登山口(30分)→ 二ノ塔(60分)→ 三ノ塔(20分)→ 烏尾山(30分)→ 行者ヶ岳(30分)→ 政次郎尾根分岐(20分)→ 新大日(30分)→ 塔ノ岳・山頂(40分)
※下山ルートは上記(1)の大倉尾根。
コースタイム/ 7時間程度
標高差/ 700m程度

[登山道の特徴]

ルート上に道標やルート上の位置を示すナンバープレートが設置されていますので迷うことはほとんどないと思います。
(1)大倉尾根コースの場合
「大倉」バス停から登り始め、斜面に取り付いて50分ほどで尾根に出ます(雑事場ノ平)。大倉尾根に出ますとその先は長い階段ゾーンが山頂まで断続します。
見晴茶屋から駒止茶屋の間はモミジが植栽されており秋には紅葉ゾーンとなります。
大倉尾根上にはいくつかの茶屋があり、そこにはベンチもあるので休憩適地です。なお茶屋の営業は平日はほとんどないものと思われます。
塔ノ岳の山頂は直下までいかないと隠れて見えません。
花立山荘の手前あたりから麓の景色が眼下に広がって見えるようになります。
(2)表尾根縦走コースの場合
「ヤビツ峠」バス停からいったん車道を下りて行きます(バスの進行方向からさらに先(北方向)へ進む)
三ノ塔まで上がると展望がよくなり、向かう先の塔ノ岳がよく見えます。
三ノ塔から烏尾山の間、行者ヶ岳の周辺に岩場・鎖場があります。
表尾根のルート上には何ヶ所か「大倉」バス停(秦野戸川公園)に下りていけるエスケープルートがあります。ただしなかにはあまり整備されていない道もあります。
三ノ塔から先は眺望に恵まれた稜線歩きになります。
●トイレや水場など
大倉尾根、表尾根ともに登山道上には水場はありません(麓にはある)。ルート上の茶屋や小屋が営業している場合はドリンク類を購入できます。
トイレはどちらのコースも複数あります。
以前、大倉側の雑事場平の近くに小屋があり、そこに水場もありましたが、現在は小屋は撤去されて水場も廃止されました。テントサイトになっていますが、水場はありません。

[難易度・危険個所など]

上記の岩場・鎖場が難所・危険個所になります。難度は高くありませんが足を滑らせるとガケ下に滑落しかねないポイントもありますのでご留意ください(三点支持でキチンとポジションをとれば問題はほとんどない)。
大倉尾根の場合、花立山荘手前の登りが一番キツイと思われます。
大倉尾根の下りはザレ場もあります。
ゴールデンウィークあたりから秋口までヤマビルによる被害が多いです。

[アクセス]

●大倉尾根コース
小田急小田原線「渋沢」駅から路線バスで「大倉」バス停(終点)まで約15分。「大倉」バス停から登山口まで徒歩。
●表尾根コース
小田急小田原線「秦野」駅から路線バスで「ヤビツ峠」バス停(終点)まで50分程度。「ヤビツ峠」バス停から登山口まで徒歩。
《補足》
●小田急/特急ロマンスカー 
一部の便が「秦野」駅に停車することがあります。

[国土地理院地図]

塔ノ岳

[コースマップ]

丹沢・大山安全登山マップ (山と渓谷社)

<こんな方にオススメ>

(1)東京近郊でトレーニングがてらに登り応えのある山に登りたい
(2)自分の体力度や山行スピードがどの程度か計ってみたい
(3)東京近郊でちょっとランクアップの縦走登山をしたい


<補足情報>

[売店等]

「渋沢」駅近くにコンビニはあります。
「秦野」駅近くにコンビニはあります。
「大倉」バス停のそばに売店・自動販売機があります。
「ヤビツ峠」バス停そばに売店・自動販売機があります。
塔ノ岳山頂に建つ「尊仏山荘」では飲料・スナック類を販売しています。
登山道にある茶屋などでは飲料・スナック類を販売しています。
今回の登山道上にある茶屋や山小屋などは「平日は営業していない」「予約があった時だけ営業している」などの限定的な営業のみのところもありますのでご留意ください。

[日帰り温泉など]

湯花楽 秦野店 ※公式サイト 渋沢駅 天然温泉ではない。
名水はだの富士見の湯 ※公式サイト
弘法の里湯 (秦野市)
はだの・湯河原温泉 万葉の湯 ※公式サイト

[お食事処]

なんつッ亭 秦野本店 ラーメン (渋沢駅)
レストラン鈴乃江 洋食 (渋沢駅)
お食事処いろは食堂 定食 (渋沢駅)
※日帰り温泉施設には施設内食堂があります。

[山小屋等の宿泊施設]

尊仏山荘 ※公式サイト
みやま山荘 ※公式サイト
烏尾山荘 (PEAKS)
神奈川県立山岳スポーツセンター ※公式サイト

[名産品]

落花生
蕎麦
豚肉の味噌漬け

[付近の山]

鍋割山(丹沢)
丹沢山
大山(丹沢)
蛭ヶ岳 ※神奈川県内最高峰
関東ふれあいの道
畦ヶ丸

[お天気情報]

塔ノ岳/山の天気 (tenki.jp)

[そのほかの補足]

●秦野ビジターセンター
「大倉」バス停隣接の県立秦野戸川公園内にある、丹沢登山の情報センター。館内には丹沢の自然や登山に関する展示があるほか、安全に登山をするためのアドバイスや相談を受け付け。各種イベントも実施。
●ヤビツ峠レストハウス
2021年にオープンしたヤビツ峠そばのカフェ兼売店


<私的な雑感>

“地獄”です。
塔ノ岳は長ーい長ーい“階段地獄”です。繰り返しになりますが、大倉尾根を登る場合、稜線の“雑事場ノ平”に出てから先は山頂までほぼ階段ゾーンです。そしてひたすらのほとんど直登(階段での)。
そんなわけで、登山者の間では通称“バカ尾根”などともされています。

個人的に一番キツイと感じるのは花立山荘手前の階段ゾーンでしょうか。毎度のことながら「なんで大倉尾根を登りに来ちゃったんだろう…」「今日はもう花立山荘で帰ろうかなぁ…」などとうなだれてしまいます。
そこで振り返った時に眼下に広がる眺望と「花立山荘に着いたらカキ氷を食べよう」という自分へのご褒美を目の前のニンジンにして一歩一歩あがります。階段を上がりながら花立山荘の幟がちらりと見えると「もう少し」とちょっと力が出て、やっと辿り着く。毎回、同じような繰り返し。
花立山荘について少し休憩すると、「ここまで来たから折角なので山頂まで行くか」と思い直します。

塔ノ岳のネックは、「大倉」バス停に下山しても手近なところ(徒歩圏内)に日帰り温泉などがなくて「ちょっと不便」という点でしょうか。
あれだけ多くの登山者がおり、バス停は広い公園にあるのですから、何らかの施設がつくれそうなものですが。温泉でなくてもいいので、すぐにお風呂に入れると嬉しいなーと感じている方はほかにも多くいらっしゃるのではないでしょうか?
なにか難しい“大人の事情”があるのかもしれませんが…。

大倉尾根よりも表尾根の縦走の方が好きです。もともと縦走登山が好きということもあります。東京近郊でも奥多摩などに縦走コースはありますが、見晴らしや展望はそれほどでもない印象です。
もちろん、北アルプス縦走のような雄大さはありませんが、それでも表尾根縦走は丹沢山塊の山並みやこれから自分が向かう山脈の見通しがよく、晴れ晴れとした気分にもさせてくれるので、とてもお気に入りです。

機会を見つけて何度か八ヶ岳や北アルプスなどにも登りに行きます。そのときは「俺もすこしは成長したかなー」と思ったりもします。しかし、その後にバカ尾根を登ると、「あれ、おかしいなぁ…」と毎回、打ちのめされています。「オマエなんか、まだまだ甘っちょろいんだよー!」とお叱りを受ける思いです。
そんなわけで、塔ノ岳は、自分の身の程を毎回、思い知らされることになる、ありがたい存在です。


<備考>

「Let's GO! 丹沢・大山やまなみ登頂スタンプラリー」 ※公式サイト
●お得な切符
丹沢・大山フリーパス ※公式サイト

<参考サイト>

丹沢大山国定公園 (神奈川県)
秦野ビジターセンター ※公式サイト
丹沢大山ナビ (神奈川県)
丹沢大山エリアの登山道通行情報 (神奈川県)
かながわパークレンジャー (神奈川県)
かながわの山にのぼりたい (神奈川県)
関東ふれあいの道 (神奈川県)
秦野戸川公園 ※公式サイト
神奈川県立山岳スポーツセンター
神奈川中央交通バス ※公式サイト
山と高原地図「29.丹沢」 (昭文社)
秦野警察署 ※公式サイト

 

<関連記事>

塔ノ岳周辺の登山に関する上町嵩広の関連記事です。一部、外部サイトの記事もあります。


<バックナンバー>
バックナンバーはnote内マガジン「山の魅力」にまとめております。

[奥多摩]
0004/三頭山  0009/御前山  0010/雲取山  0020/浅間嶺と浅間尾根
0028/御岳山
[丹沢・箱根]
0005/大山  0030/塔ノ岳  0035/金時山
[秩父・奥武蔵]
0023/金峰山  0026/棒ノ折山  0032大菩薩嶺
[八ヶ岳]
0001/編笠山  0007/飯盛山  0014/天狗岳  0017/北八ヶ岳周遊(冬)
[北アルプス]
0012/燕岳~常念岳  0024/涸沢カール  0033/立山
[南アルプス]
0011/北岳
[関東そのほか]
0006/赤城山  0008/大楠山  0018/一ノ倉沢(冬)  0021/男体山(日光)  0025/那須岳  0031/鳴虫山  0034/戦場ヶ原  0036/奥高尾縦走路
[東海]
0016/城ヶ崎海岸  0019/幕山  0027/沼津アルプス
[山梨県そのほか]
0022/三つ峠
[長野県そのほか]
0029/黒斑山
[その他の地域]
0002/雨飾山  0003/宮之浦岳  0012/大杉谷~大台ヶ原  0015/苗場山

 

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(6) 不定期更新です。 毎月一度を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2023/02/22 上町嵩広  改訂:2024/01/02)


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