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真面目な日本人。ドイツ生活のぼやき - 4

街を歩いていたら、久しぶりの日本人の知り合いに会いました。手にはタピオカドリンク。「お久しぶりですね」と声を掛けると「えへへ、今バイト帰りでちょっとご褒美」と微笑んでくれました。そしてそのまま立ち話をして、なんとも興味深いことを聞いたのです。

彼女は音楽を生業にしているので、アルバイトってなんだろうと詳しく聞いてみると、めがね屋さんで働いているとのこと。しかもそのめがね屋さんが、ちょうどわたしが行きたいと思っていたお店だったのだから、「他店…というか、日本で買っためがねも調整もしていただけますか?」「あのお店、前にコンタクトを買ったときに優しかったから、また行こうと思ってたんです」と、つい早口になってしまいました。

でも、音楽家として活躍している彼女がどうしてめがね屋さんなのだろう?と気になって、日本でもめがね店でバイトをしていたのかと尋ねると、この街で初めてめがねを調整したとのこと。

「ええ!すごい!」
外国で新しいことに挑戦するということが、どんなに大変なことか知っているつもりだったので、素直にそうリアクションすると、彼女は「えへへ」とはにかみながら、こう続けたのです。

「ドイツ語をもっと上手く話せるようになりたくて、バイトを始めたの」

なんて前向きでチャレンジ精神に満ちた方なんだろう!音楽家ってそういう方が本当に多い気がします。会うたびに勇気と希望を与えてくれるのが、わたしの音楽家の友人たちなのです。

そうか、わたしもドイツ社会に紛れて働いてみたい……!もっとドイツ語が上手になりたい!そんなふうに感化されて、彼女に別れを告げました。日本で購入しためがねも調整してくれるそうなので、もちろん彼女の勤務日を確認して……。

その後、横でわたしたちの会話を聞いていた夫が、なんだか嬉しそうに口を開きました。

「いやあ~彼女、日本人って感じだったねえ」

え?どういうこと?わたしたちのリアクションが日本人らしかったのかしらと不思議な顔をしていると、「だってさ、言語のスキルを上げるためにアルバイトをするだなんて、初めて聞いたよ」とのこと。

なるほど、ヨーロッパでは、外国語の練習になるかもという理由でバイトを始めるという考えを持つ人は少ないのか。なるほど!たしかに、真面目だって言われがちな日本人らしい選択かもしれない。そうやって納得を表わしつつ、わたしも新しいアルバイトをしてみたいという話を続けました。

「ねえ、どこがいいかな?わたしもめがね屋さん?でも、忙しくないところがいいなあ」

「新しくできたアジアスーパーはどう?」

「いいね!そこなら英語で話す店員さんやお客さんが多いから、英語の練習にもなりそう!」

「ほら!日本人!」

彼の指摘にハッとして、なんだか恥ずかしくなって、わたしもその音楽家の彼女のようにはにかみました。でも、わたしはわたしのままで、そして日本人は日本人のままでいいじゃないですか。わたしが次にどこかで働くなら、ドイツ語も英語も、それからちょっぴりイタリア語も使えるところがいいなあ。


写真:散歩中に見つけた風景。撮ったときには、ドイツの夏らしく鋭い気がしていたこの日差し、写真で見てみると、なんとなく秋らしいような気がします。青く豊かな草木も、もう少ししたら落ちたり枯れたりして、すぐに冬が来るんだろうなあ。右側には、今は使われていない井戸が写っています。

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