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結婚したい男の子たち。ドイツ生活のぼやき - 5

ドイツに住み始めてから3年、数年前にワーキングホリデーをしていたのを合わせても4年ほどと、ドイツ生活がそんなに長いわけでもないのですが、仲の良い友だちというのは何人かいます。

その中で、特に食事の話で盛り上がるのは、やはり日本人です。彼ら彼女らの中にはドイツの食生活に慣れて、上手く節約している方もいます。が、やっぱり日本食が恋しい!カルテスエッセン(冷たいお食事)じゃ満足感が得られない!と思うわたしは、基本的に日本食かイタリア料理を作っています。ドイツのお食事は基本的にレストランでしか食べません。美味しいんですけどね。



ところで最近、日本人の男の子たちと話していて気づいたことがあります。日本では、「男の人は家事をしない」と考える人も多く、そういう考えの親や祖父母に育てられた人は、大学に入学したり会社に勤め始めたりしたとき、料理や家事のスキルゼロで、ひとり暮らしを始めることになります。もちろん、料理やその他の家事をまったく学ばなかった人なら、女の子でもスキルゼロからのスタートです。

実際、高校入学とともに上京し、ひとり暮らしを始めたわたしも、料理を覚えたり、掃除や洗濯のコツを覚えるまでに何年もかかりました。実家では母に頼りきりだったからです。でも、ひとり暮らしを心配してくれた高校の先生方などからもアドバイスをもらいながら、なんとか「食べられる料理」を作れるようになり、買い物でも特売品に目を光らせることができるようになり、少しずつ「ある程度の家事ならこなせる」というレベルになっていきました。掃除や洗濯に慣れて楽しくなってきたのは、つい数年前、ひとり暮らしを始めてから10年以上経った頃です。情けない……。

しかし、わたしの高校入学の数年後に、大学進学のために上京した従兄たちは、なんと「男の子で料理が大変だろうから」という理由で、頻繁に冷凍した手料理を送ってもらいはじめたのです!送っていたのは彼らの母と、わたしたちの祖母だったと思います。
念のため補足しますが、親が子をサポートすることは素敵なことだと思います。また、これを言った祖母のことを、わたしは心の底から愛しており、世界の誰よりも尊敬しています。だから、この発言も時代の産物と思っていて、彼女に対するネガティブな感情は一切ありません。

でも、男の子だからという理由だけで、こんなに下駄を履かせてもらうのか……と妙な気持ちになりました。だって、苦労して食材を選んで、節約のために割引やポイント制度について考えて、お金を払って買って、重い袋のせいで手を真っ赤にしながら家まで歩き、まだ未発達だったネットで一生懸命調べながら、触れたこともなかった食材をどうにか食べられるかたちに変えて、時には失敗して食材を台無しにして落ち込む、というような苦労を一切せずに、彼らは勉学やアルバイトに専念できたのだと思ったら、従兄たちのことは大好きなのに、やるせないと思いませんか?

しかしながら、ここで言いたいのは、彼らに対する嫉妬でも怒りでもなく、女の子でも男の子でも、学ばなければ誰だって苦労する、ということです。



話を戻しますが、ドイツで生活する男の子たちの中には、あまりひとり暮らしの経験がなく、家でも料理や家事を積極的に学ぶ機会がなかった人が一定数います。女の子たちは、日本でそのスキルを身につけていることが多いし、ドイツでの「ライフハック」的な情報も、女性同士での会話だったり女性インフルエンサーから発信で得ることが多いようなので、なんやかんや乗り切っているような印象です。

でも先に書いたとおり、家事や料理のスキルに性別は関係なく、言ってしまえば「やるか、やらないか」という話なので、スキルなしで来てしまった人たちは、異国の地で一からあの苦労をすることになるのです。もちろん、外食するなどして、お金で解決することもできますし、味にこだわらない人であれば、栄養になりそうなものを口に詰めておけばいいのですが……。

わたしの住む街に来る20代前半の日本人は、たいてい交換留学などで長くても1年だけの生活なので、外食や学食ばかりでも、さほど気にならないと思います。しかし、20代後半かそれ以上の年齢でドイツに来ている人は、長期滞在や永住を予定している人が多いうえに、現地での結婚を望む人もそれなりにいるので、そうとなると経済的にも健康的にも、いつも外食というわけにはいきません。

さらに現地で結婚を目指すとなると、今の時代だと特に、男性であっても、ある程度の家事ができることが望まれます。その理由は、ドイツ人やその他の現地人たちが共働き・家事分担を一般的と考えるから、というだけではありません。日本人女性と結ばれれば、専業主婦になって支えてくれる……!というのも甘い考えなのです。というのも、そういう女性は日本には少なくないかもしれませんが、わざわざドイツに長く住もうと考えている日本人女性は、経済的にも精神的にも自立していることがほとんどで、そもそも結婚自体を、絶対にする・したいものとは考えていない場合も多いからです。
(もちろん、例外はいくらだってありますよ!)

そういうわけで、楽しんで美味しい料理を作ったり、家事を適切にこなせたり、基本的な節約術を知っていたりするということは、一緒に暮らしたときに、お互いを助け合って生きていくことができる、という未来を想像させる良いアピールポイントだと思うのです。



結婚なんてしなくたって、パートナーなんていなくたって、人生たのしく快適に幸せに生きていけるぞ!という段階に達したとき、ふと、一生涯連れ添いたいパートナーが現れるのではないか、という持論もありますが、それはさておき、まずは心を満たして、それから料理なり家事なりスキルを上げていけばいいのです。

最近では、ヨーロッパ系女性と東アジアの男性が、仲睦まじく街を歩く姿も頻繫に目にします。日本人の男性たちがモテないなんていう時代は終わったのだと思います。せっかくグルメの国に生まれ育ったのだから、結婚を夢見るわたしの男友だちが料理の腕をぐんぐんあげて、未来のパートナーの胃袋を掴むことを願っています。


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