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潜水少年とケミカルウォッシュ

私は水中で恋に落ちたことがある。
中学一年生の頃、潜水にどハマりしていた私は、片道徒歩1時間の距離にある市民プールに通っていた。
そんな長い距離を毎日一緒に歩いてくれる友人はいないので、手あたり次第友人を誘っては、市民プールに繰り出していた。
そして飽きもせずにひたすら潜水する毎日を送っていた。

水中から顔を出して泳いでいる世界と水中は全くの異世界である。
耳に膜が張り、世界の雑音が聞こえなくなる。
世界が急に自分だけのものになったかのような感覚になる。
それが妙に心地いいのだ。
人様の下半身には遭遇するが、全身にはなかなか遭遇しない。
それがまた面白い。

もう夏休みも終盤に差し掛かっていたとある日。
私の赤い実がはじけてしまった。
いつものようにひたすら潜水を楽しんでいると、私よりも長い時間潜水をし続けている人物を発見した。
滑らかに腰のあたりをくねくねさせて、それはまるで人魚の様だった。
私は一瞬でその滑らかさにくぎ付けになってしまった。
とにかく美しかった。
水着を下半身しか纏っていないので、すぐに男子だと分かった。
おそらく少年だろう。
その人物が近づいて来て私を通り過ぎた。
ひぇ~なんて、美しいのだ!美美美美少年!

プールの中で鼻血が出るかと思った。
後頭部を鈍器で殴られたかの衝撃。
心臓がバクバクして怖いくらいだった。

私は水中で彼をストーキングしてしまった。そして彼が水中を出て、どうやら帰ってしまうようなので、咄嗟に「もう彼に二度と会えないかもしれない。」という気持ちになり、心臓バクバクの私はいてもたってもいられなくなった。
そして慌てて友人を連れて猛スピードで着替えをすまし、出口で彼を待ち伏せした。不自然にならないように友人としゃがんで必死にアリの巣を見ているふりをして彼を待った。
もしかして、もう先に出て帰ってしまったかもしれない、不安でいっぱいになる。
まだ鼻血は出ていない。

…….続きはまた今度。





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