無機質の起点
線路と高速道路が好きだ。
春の終わりから夏にかけて、決まって酷い逃避願望に襲われる。突き動かされるように、急かされるように。そうすると大抵格安の高速バスに乗って、6時間揺られて、首都東京へ向かう。昼便の高速道路は、本当にどこへだって行けると錯覚させて、時速80kmで、高架下の景色が流れていく。緑が灰色に変わって、高揚していくことに夏と、切なさを憶えるのが、本当に好きだ。JRの各駅停車に乗って、ただぼうと揺られて、窓の外の景色が変わるのを眺めるのが好きだ。線路と、高架が交差する踏切がたまらなく好きだ。高速道路も各駅停車の線路も、地元にはなくて、どこか「遠くへ」行くためのみちだと、4年前に思った。わたしの知らない、わたしを知らないどこか遠くへ。
その始まりの地点を、いつか見てみたいと思う。ぜろ番の場所。よーいどんのライン。なんだ、なんでもねえや、と笑って、少し寂しくなって、そうして終点に向かう、そんな旅がしたい。
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