見出し画像

究極は1on1が無くても良い状態が望ましい

「1on1ミーティングをやらなきゃ!」「1on1は決まりだからやります」というボヤキを聞くことがある。そりゃそうだ、ただでさえ忙しい。効率化をしろ、DXを推進しろ、あれもこれも覚えろ、リスキリングだ、ダイバーシティだ、パワハラ注意しろ、あれやこれや。いろんな「あれをやるな、これをやれ」が渦巻いている。これは辛い。

1on1はベストプラクティスのひとつに過ぎない

前置きが長くなったが、1on1ミーティングは本来はやらなければならないものではない。ただ、これが人材マネジメントの方法として、現時点では合理的だと考えられているからに過ぎない。ひとつのベストプラクティスを取り入れているのだと思う。

社会も市場も変化が激しく速いという環境の中で、上司部下の意志疎通、目的地の確認と目標のすり合わせ、もっと言えば組織内の点と点をつなげていくためにも、対話の時間をしっかりととることが望ましいと考えられているからだ。この点は私も同意する。

ただし、1on1ミーティングをやることが目的になった瞬間から歯車は狂い始める。いや、1on1ミーティングをやらされ感でやっていると感じたら、それはもう黄色信号だ。もはや赤信号に変わりかけだろうか。

1on1ミーティングをなぜやるのか。もちろん組織によって目的は様々にあるだろうが、やはり刻一刻と変化する状況に適応しながら「パフォーマンスを高める」ためにやっているのであって、本来は業績目標の達成や人材育成を行うことを目指して実施するはずなのだ。

ただやはり忙し過ぎたり、人手不足だったり、そもそも目の前で上司部下が一緒に働いていないというケースも多発するわけであり、そんな中でマネジメントをしてチームや組織の目標達成を目指していかなければならないわけで。だから「1on1」を実施すると決めることは大切な対話という名のコミュニケーション機会を確保することに他ならない。とても重要な意味を持つのだ。

ただ一方で思うことがある。「1on1がいいらしいぞ」「1on1をやらなけれならないから」という理由だけで、盲目的にやるのがいいかというと、そうではない。

1on1ミーティングをしなくても良い状態とつくるには?

私は究極は「1on1ミーティング」をしなくても良い状態が最高だと考えている。1on1について書いている癖に何を言っているんだと思われるかもしれない。けれど、1on1を実施しなくても、ひとりひとりの強みや弱みも把握していて、どんなことが好きか嫌いか、何が得意か、今何をしたいと思っているのか、将来どうしたいのか、現状の問題は何を抱えているのか、業務の進み具合はどうか、心身の健康状態はどうか…etc…こういったことを把握できていたらどうだろうか。

あえて時間をとらずとも、普段から観察し、日常的にコミュニケーションをとり、常に把握できており、組織の目標も皆がしっかりと理解し、目的地に向けてそれぞれが自律的に進んでいこうとしている状態になっているとどうだろうか。
チーム状況としては理想的だし、きっとマネジメント負担も少なく、高いパフォーマンスを発揮できる組織なのではないかと想像する。

もしできるなら、日ごろから小さなコミュニケーションを欠かさず、メンバーのことに関心を持ち観察眼をしっかり持ち、必要な時にすかさずフィードバックをしたり、方針変更を伝えたりをタイムリーに行うことだ。

でも、それがなかなかできないからやるのだ。1on1ミーティングを。

テレワーク、ハイブリッドワーク、直行直帰、シフト勤務、フリーアドレス勤務、何かしら決まり事をつくり、コミュニケーション機会を意図的につくらないとお互いのことを知り理解し、信頼関係をつくるタイミングすらつくれないのではないだろうか。

信頼関係?何それ美味しいのか?
コミュニケーションの時間?そんな時間もったいない。マニュアル通りやればいいんだ。
対話なんて、そんなことは必要ない、決められたタスクを着実に実行してもらえればいい、そういう声もあるだろう。業種業態職種によってはそれが最も生産性を生むケースもあることは否定しない。でもそうではない仕事に就く人もやはり多数いることを念頭に置く必要がある。

でも根本的に共に働くのは、意志のある人であるのだ。そこを忘れてはいけない。

毎日の短い対話の時間の有用性

どうしても1on1ミーティングなんて時間が無いということであれば、1日1人あたり5分は話す時間をとるというのはどうだろうか。日々の様子がわかるし、その時間を使うことで、日ごろ発生する小さな問題や課題を相談しやすくなり、しかも早々と解決できる。私たちは社内でDSM(デイリーショートミーティング)と表現して実施していた。テレワークが主だったコロナ禍のチームマネジメントとして非常に有効だった。試してみてほしい。

1日5分、1か月ああり20営業日であれば、じつは100分の時間を使うことになるんですが!

1on1ミーティングは職場により様々なパターンがあるが、頻度を重視するなら2週間に1度15分というものがよく聞かれる。私は1か月に1度30分を基本にメンバーと定期的に実施している。

1人あたり30分/月の対話時間をとれないとすれば、そもそもの業務整理をしたり、マネジメント方法を見直した方が良いだろう。

笑い話のようだが、部下が20名いて全員と1on1やっていますというケースはちょくちょくと聞く。もっと多くて、そもそも無理ゲーというケースも。
頑張っていますね、と言いたいところだが、そもそも目が行き届く人数としては無理があるのだ。よくあるが5名1単位くらいのユニットが"小隊"単位でチームワークをとりやすく、マネジメントも利きやすい。多くても6人~8人くらいじゃないだろうか。

それを超える人数をマネジメントしているとしたら、マネジメントできる人を育てることを最優先課題とした方が良いかもしれない。(それが大変なことも、時間がかかることもよく分かる!)でもステップバイステップでやっていかなければ、ずっとしんどいままですから。

本題に戻るが、1on1ミーティングが不要なくらいの状態を目指して。あなたの働く組織の、ひとりひとりの働き方にも左右されることは前提だが、上記で触れた通り工夫のしようはある。日常的にメンバーとコミュニケーションをとり続けることができているのなら、込み入った話をする時だけ時間をしっかりとればいいだけなのだ。

とはいえ、無理にそこを目指すより、現状は1on1ミーティングをマネジメントシステムの中に組み入れる方が、よほど近道だと考える。

引き続き1on1について、連載明日以降につづく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?