読書と平凡な日常41 良薬は口に苦し

 どうも、紅りんごです。昨日からロミオとジュリエットを読んでいて、今日読み終えました。憎しみを歌い、悲しみを歌い、そして愛を歌う。きっと原本をスラスラと読めたら楽しいだろうな……と思いました。ジュリエットを仮死状態にさせた薬、そしてロミオを死へと導いた毒薬。薬も過ぎれば毒となる。今日はそんな作品を紹介します。

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 41冊目は中山七里『ヒートアップ』。特殊体質の捜査官と頭脳派ヤクザの異色のタッグが違法薬物を追うサスペンスミステリー作品。読み終えた後に「そういえば」と思わせる叙述トリックには驚かされる。

 麻薬自体は治療に使われることもあると言いますが、それでもやはり使用用途を誤れば人体を蝕む毒となります。薬と銘打つものが全て人を癒し、人を救うなんてことはありません。冒頭のロミオとジュリエット然り、薬がもたらすのはどうしようもない結末であることもありえるのです。他に例を挙げるなら、『トリスタンとイゾルデ』の物語でしょうか。愛の霊薬の効果に呑まれたトリスタンはイゾルデを愛するけれど、身分の違う二人、結ばれる筈も無く離れ離れになってしまう。それでもなお、二人の気持ちは繋がっていて……。薬により増幅された愛を愛と呼べるのかは疑問ですが、その辺りは言わぬが花と言うものですね。

 たとえ別離の憂き目にあったとしても、彼等は幸せの内に薬を手にしたのかもしれない。多すぎる希望は毒となる。これまた薬と同じ。恋は身を焦がす、と言いますが、薬と恋はいい塩梅で、ということなのでしょうか。その妙が分かるのはまだまだ先の気がしています。

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