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読書1 自動車は世の中を不便にしている?
この本は、約半世紀前に発売されたものであるが、現代でも共通しているところが多くあった。また、車に対する意識や道路等に対する社会課題の解決に向けて、概要だけでも知っておいて損はないと思う。
また、国内外の先進的な都市で、何故ウォーカブルシティが推進されているかを理解するうえの1つとして、とても役に立った。
①この本のなかで印象に残ったこと
・道路における歩道空間の重要性
日本では、十分な歩道空間がない道路に出くわすことが何度もあると思う。ただ、不便さや危険を感じることがあったとしても、この本を読むまでは、それが当たり前と考えていた。
この本では、欧米の考え方を紹介しており、歩道と車道が分離されていることが当たり前であると伝えている。つまり、日本と欧米では、歩道空間に対する大きな認識の差があると述べている。
また、とても重要に感じたのは、歩道は誰にでも平等であるということ。当たり前であるが、歩道は、子どもや高齢者、障がいを持つ方などの誰でも利用できるものである。すなわち、自動車と異なり、利用できる人に制限はない。
・車の普及は、公共交通機関を不便にする?
私はこの本を読むまで自動車が普及することで、漠然と世の中は便利になっているものだと考えていた。しかし、自動車の普及は、公共交通機関の利用者が減り、電車やバス路線の廃止に繋がってしまう。上記で述べたように、自動車は誰しもが利用できるものではない。そして、子どもや高齢者、障がいを持つ方などにとって、限られた移動手段として、公共交通機関はかなり重要なものだと考えられる。(私は、これまで埼玉や東京で暮らして、問題なく利用できたことから、気付くことができなかった。)
・道路を整備しても、車の渋滞は解決しない?
この本のなかで、目から鱗であったのは、道路を整備することで、車の渋滞を解消できるのは、一時的であるということだ。これは、道路が便利になればなるほど、自動車が普及するため、交通量が増え、新たな渋滞を引き起こすことに繋がるからである。それなのに、新たな道路を過剰に整備することは、初期投資や維持管理費などの膨大な費用が生じる。現在の日本は、人口減少が進んでおり、これから1人あたりの負担が増えていくため、道路をどう保持していくかは大きな課題であると思う。(道路を廃止するにしても、そのあとに別の形で利用をすることも考えていかなくてはならない。)
自動車の世の中を便利にしているのか、道路によって歩行者の権利はどうなっているのか、を深く考えたことはなかったので、自動車のデメリットや歩道空間の重要性に気づくきっかけとなった。
②道路空間の可能性(ポテンシャル)について
・これからの時代、道路はもういらないのか?
現在の道路は、1964年の東京オリンピック開催のために整備されたものが多くあることから、設備の大量更新が課題だろう。また、人口減少社会が到来しており、2008年の1億2808万人をピークに、2023年で1億2,477万人と約300万人の人口が減少している。また、高齢化率は、2022年の10月1日時点では、28.9%となっている。
つまり、これから自動車に乗れる人は、これまでよりも大きく減っていくのではないか。そして、このままでは道路が多すぎるのはないか。また、道路の維持管理を考えるととても深刻な状態ではないのか。
・道路(歩道空間)の可能性について
これからの道路はどうあるべきなのか。私は、道路(特に歩道空間)を活かす取り組みを進めてほしい。これからのまちづくりでは、きっと歩いて楽しいことが重要なのではないかと思う。
海外の先進的な都市では、ウォーカブルシティを掲げて、歩道空間を活用した魅力的なまちづくりに取り組んでいる。
ウォーカブルシティ(Walkable City)とは、直訳すると「歩きやすい(歩いて行ける)街」。自動車を使用せずに歩いて移動できる(バスなど公共交通機関の利用を含む)街のこと。
国内においても、国土交通省がウォーカブル推進都市を募集して、各都市での、推進に取り組んでいる。そのなかで、私は、姫路市へ行ったとき、ウォーカブルシティ施策を体験して、とても感銘を受けた。
③姫路市のウォーカブルシティ施策で感じたこと
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姫路市といえば、世界遺産の姫路城がある。
私も知らなかったが、姫路城は新幹線も止まる姫路駅から約800mの距離にあり、駅からも見える。ちなみに、この距離は歩いて約10分であり、バスなどを使わずに駅から歩いて行ける絶妙な距離らしい。姫路市は、世界に誇れる地域資源を最大限に生かす施策として、姫路城までの道のりを魅力的にするまちづくり(=ウォーカブルシティの推進)に取り組んでいる。
現地へ行って感じたのは、想像以上に歩道空間がとても広いことだ。しかも車道よりも歩道のほうが圧倒的に広いことに感心した。歩道が広いことで開放感があることに加えて、デザインもすばらしく、まさに歩きたくなるまちだった。(2015年にグットデザイン賞を受賞)
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私がとてもわくわくしたのは、歩道沿いの飲食店が歩道に椅子やベンチをだしていること。実はこんなことができるのはコロナ禍に伴い、国が飲食店を支援するため、道路の占用許可に関する制度が緩和したからだ。今回の設置は、コロナの緊急措置が新制度へ移行され、それを活用したものだ。
下の写真では、歩道沿いの地元チェーン店が立ち食いなどの飲食スペースを設置していた。歩道で食べられることは、食べている人がいることでのお店のPRはもちろんだが、歩道(=エリア)の雰囲気の良さに繋がるのではないかと感じた。歩道(=公共空間)として、魅力を生み出すためには、こういった寛容さが重要だと思う。
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また、面白かったのは、時間帯で歩道の景色が変わったこと。下の2枚の写真がまさにその状況だ。姫路城へ向かう際に、写真②の状況であり、変わったベンチ?が置いてあった。しかし、帰りに通ると、写真③の状況になっていた。これはお酒をメインとして飲食店は夕方から開店するので、開店する際に椅子やパラソルなどを設置しているから。
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![](https://assets.st-note.com/img/1676980287031-EurIXTiwi5.jpg?width=800)
皆さんも姫路駅へ行ってみたら、ぜひこの歩道空間を体験してほしい。
これからの時代、既にある道路をどう活かしていくかは、どの地域においても重要な課題の1つであると思う。その課題の解決には、道路の原点である歩道を振り返り、どうすれば歩行者が楽しい空間にできるかが必要だろう。 自動車の自動運転などが普及して、これまでどおり、道路の扱いは変わらないかもしれないが、歩いて楽しいまちが増えることで、子どもたちが楽しめる、そして大人になっても誇らしい魅力あるまちが増えるのではないでしょうか。
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