見出し画像

カブの葉でふりかけを作る人生がいい

バスの窓から暖かく差し込む朝日さえ、恨めしく思えてしまう月曜の朝。眠気と頭痛に耐えながら、それでもなお、右手はスマホを離せずにいた。

社会人になりたての頃、週末が終わる憂鬱に、本気で嫌気が差していた。

残業と飲み会でいつも寝不足。仕事以外に向ける体力なんて残ってなくて、荷物の不在通知も壊れたTVも放置して、友達と約束していたディズニーを当日ドタキャンするくらい、心も体も疲れ切っていた(ディズニードタキャンは本当に良くない。友達ごめん。)

もちろん自炊する余裕もなく、ぐったり疲れたまま迎える週末は、何もしないだけで過ぎていく。

そんな時、かつての幼馴染みの投稿写真に、画面を通して久々に新鮮な緑色を見た。

「カブの葉とちりめんじゃこでふりかけを作りました。」という趣旨のコメントが添えられて。

何だか、卒倒しそうだった。

羨ましさと悲しさと情けなさで胸がいっぱいになったとき、心の中で何かが弾けた音がした。

そうだった、そうだった。

私も、自炊が好きだった。

明るいうちにスーパーに行くのが好きだった。

なんだかいっぱいいっぱいで忘れてた。

旬の野菜をお得に買うのが好きだった。

野菜の端材でお出汁を取って、捨ててしまいそうな部分をアレンジするのが好きだった。

余った食材でお楽しみカレーを作るのが好きだった。

私も、カブの葉でふりかけを作りたい。

そういう時間と、気持ちの余裕と、ささやかな幸せがある毎日がいい。

そういう人生がいい。

結局、新卒で入った会社は1年と半年で辞めちゃって。

これから何を生業に生きていくのか、仕事は何にも決まっていなかったけど、ありたい姿は常に心に決まってた。

「カブの葉でふりかけを作る人生がいい。」

誰にでも理解してもらえるものでも、堂々と言えるようなものでもないけど、今でも迷ったとき、意外と自分を助けてくれる指針になっている。

===



美味しいおやつを食べたい🍪🍡🧁