新卒時代の思い出を少し
思い返すと、いろいろ出てくる。ちょっと恥ずかしい自分の新卒時代の思い出。当時はけっこう落ち込んで、上手くできない自分を責めることも多かった。
今日は、誰に頼まれたわけでもないけれど、私の新卒時代の思い出を3つほど書いてみる。
1.「御社」と「弊社」の逆転現象
「おんしゃ」という呼び方は、就活生のとき学んだ。新入社員になって、ここに「へいしゃ」が加わって困惑した。入社前まで「おんしゃ」と呼んでいた会社が、急に「へいしゃ」になることに、慣れるまで時間がかかった。
ある時、一本の電話がかかってきた。
「お世話になっております。」
若い女性の声だった。どこかの貸し倉庫の営業電話だったと思う。話し方で、何となく相手も同じ新入社員だと思った。
適当に電話を切ることも知らず、一生懸命に話してくれるので、こちらも一生懸命に聞いた。なんならメモも取っていた。
途中で、何だか違和感を覚えて、ふと気がついたのだが、電話の相手が使う「おんしゃ」と「へいしゃ」がまるで逆なのである。どうりで話が全然入ってこない。私は丁寧に指摘してあげることにした。
「先ほどから、へいしゃのことをへいしゃと呼ばれているようですが」
「あ、いえ、へいしゃのことではなく、おんしゃのことで、」
「いえ、へいしゃというのは、えっと・・」
「・・・」
自分でも何を言っているのか分からなくなった。
もう、お互い今回の件はなかったことにしようと、お互いが黙ったタイミングで、静かに受話器を置いた。きっと、頭では御社と弊社のイメージがあっても、口にすると、逆転しちゃったのだろう。でも、ちょっと分かるよ。ややこしいよね。勝手に電話の向こうの新入社員に共感をよせた。
2.ビール瓶栓抜きホールインワン
飲み会ほど厄介なものはなかった。お酒好きな上司が多く、グラスが空になるほんの少し前に注ぎ足していかないといけない。誰から指示された訳でもないけれど、何となく私の役目だと気負っていた。
初めて部署のみんなで飲み会に行った時。最初に、乾杯用のビール瓶が何本も運ばれてきた。私は普段ほとんどお酒を飲まないので、その日初めて、栓抜きを使ってビール瓶の蓋を開けることになる。早く飲みたいと言わんばかりに鋭い視線を向けるおじさんたちを前に、内心動揺しながらも、慣れない手つきで栓抜きを握った。
勢いよく栓抜きを上に振り上げたとき、ビールの蓋が弧を描いて飛んでいって、一番偉い部長の取皿にカランと落ちた。まさかのホールインワン。
そんなことってある?
場が凍るとは、あのことをいうのだ。
3.部長呼び捨て事件
もう一つ、入社して間もない頃、どうしてもしっくりこないルールがあった。社外の人と話す時は、自分の会社の人間のことを「呼び捨てにする」というやつ。いつもは、~部長、~先輩、という具合に呼んでいるのに、急に呼び捨てにするのは抵抗があったし、言いながら少しドキドキする。だから、心の中で先輩や部長のことを呼び捨てにする練習をしてみたり。
ある日、PCの不調で、情報システム部門の人に来てもらった。初めて見る無口そうなおじさんに、私は少し緊張していた。その人がPCの操作をしながら、不意に聞いてきた。
「部長だれ?」
初めて見る情シスおじさんに、私は心のどこかで社外の人と話している感覚になっていた。それで、つい。
「山田です」
周りの人が一斉にこっちを向いたのが分かった。
私はこの日、理由もなく部長を呼び捨てにした。はっと気が付いた頃には、もう言ったことは取り戻せない。恥ずかしさのボルテージが一気に100まで上がった。情シスおじさんがその後つっこんでくれたのが、せめてもの救いだった。
振り返ってみる
思えば、不器用な新入社員だった。
正しくいることに囚われて、小さなことを気にしすぎてた。分からないことを周りに気がつかれないように振舞って、後で必死に調べてみたり。
自由にのびのびやって、上手くいかなかったら先輩に助けを求められるような、器用な新入社員になりたかった。
でもこうして、当時の思い出を書いてみると、大したことでもなかったな、と冷静に受け止められるようにはなっている。
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