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自分次第で仕事はどんどん楽しくなる―100本のスプーンで見つけた大切なこと

キッチンで活躍する澤村拓也さん。ひとつひとつ、言葉を紡いでいく様子は彼自身の成長してきた姿を目の当たりにする時間でした。

幼いころから料理に親しみ、その技術を磨いてきた彼が100本のスプーンという場を選んだこと、ファミリーレストランで働くということについて、お話を聞いてみました。

澤村拓也(Takuya Sawamura)
実家で祖父母が営んでいたお豆腐屋さんで、幼いころから食べ物が作られる環境の近くで育つ。自然と料理への興味を持ち、調理専門の高校へ進学。卒業後は、老舗ホテル・街場のレストラン・ウェディング専門レストラン等でフレンチの技術を磨く。一児の父として子育ても奮闘中。

魅了された世界で技術を磨く日々、芽生えた疑問

―高校を卒業後、18歳からずっと料理人として歩んできた澤村さんですが、礎を作ったのはどの経験が大きいですか?

高校卒業後すぐに箱根のホテルに就職して、そこでフレンチに触れました。そのときの経験がきっかけでもっとフレンチをやってみたいという気持ちが芽生え、やるならば東京で学びたいと思い銀座のレストランに入りました。そこでは一から下積みのやり直し。朝の6時から明け方3時ぐらいまで働いて、いいときで休みは月に4回、終電前に帰れたらラッキー、ぐらいの生活を送っていました。周りはどんどん辞めていくんですけど、全然嫌にならなかった。そのときの経験が、大きく影響を与えています。

―すごい…苦じゃなかったんですね。それはやりがいの方が大きかったからですか?

今でこそかなりハードな生活だったなって思いますが、シェフの信頼を得られてからは何でもさせてもらえて、コースも任せてもらって。やりがいが大きかったし、楽しかった。

でも、ある程度経験を積んできて裁量の幅を広げたいと思っていたタイミングで、結婚というターニングポイントもあり、ウェディングを中心としたレストランへ転職しました。そこではコースの考案などやりたいことをさせてもらえていたけど、利益を追いかけるうち「本当に美味しいものが作れているんだろうか?」という疑問を持つようになりました。

職場環境や条件は良かったし強く転職を考えているわけではなかったんですが、ふと、以前見ていた求人サイトで気になっていた100本のスプーンのことを思い出しました。

これまでと違うファミリーレストランという業態で不安はあったけれど、調べていくうちにフレンチの料理人から転職して活躍する高橋料理長や、当時事業部長だった山崎さんの利益を追うだけではない姿に共感して、ここで僕もやってみたいって強く思いました。

「ほかの会社とは違うなにかを感じた」

自己鍛錬からチームワークへ

―実際、入社してみてどうでしたか?ファミリーレストラン。

最初は正直、現場を回せたら十分かなって思ってました。でも次第にメニューの企画・考案を任されるようになり、誰もが再現性を高く維持できるようなレシピづくりを意識するようになりました。今まで働いていたホテルや街場のレストランと違ってアルバイトの方もいるので、なるべく分かりやすく手間がかからないよう分量をグラム単位で調整したり、工数を抑えられるように仕込みをしたり。その設計は難しかったけどみんなができることがどんどん増えていくことを見るうちに、嬉しいと感じるようになりました。だって、自分で料理するのって楽しいじゃないですか。

―みんなに分け与えたいって思ってるんですね。

正直、これまでの世界は実力主義の蹴落とし合いで、自分の技術を磨くことばかりだったのでそうは思わなかったと思います。

100本のスプーンでは自分のパートだけでなく全体に関わる数字の管理を任されることもあり、はじめは頭を悩ませることも多かったんですけど、店舗の傾向を見て経営が安定するように原価率などの数字を分析するようになりました。数字に関しては自分だけで握るのではなく、得たことは他のメンバーにも共有してチーム全体で意識するように心がけています。

―これまでとは違った喜びがあるんですね。澤村さん含めメンバーの仲の良い雰囲気も伝わってきます。

それは100本のスプーンならではだと思います。みんな本当に距離が近くて、楽しくやっています。逆に技術に自信があって、それだけを武器に入社してもここではやっていけないかも。それよりも「人」のことを大切にできるかが大事だと思う。

キッチンからは、澤村さんと仲間の楽しそうな声が聞こえてくる

利益だけじゃない、自分ごととしての仕事

―自分で企画を考えることも楽しんでいますよね。最近始まったこどもパンも澤村さんの発案だったとか。

自分の子どもが1歳で、よく食べるので子ども向けのパンは必要だろうなあと思って試作しました。工数の関係で天然酵母で一から手作りは叶わなかったんですけど、出してみたらやっぱり需要はありましたね。

オープンキッチンなので帰り際に子どもたちが「美味しかった―!」って言ってくれたり、一口目を食べて笑ってるのを見ると嬉しい。だからこそ幼児食のメニューの開発には今後も力を入れていきたいです。

―パパである澤村さんならではの気づきですよね。利益だけを追うのではなく、自分ごととして考えたからこそ生まれた企画だと思います。

「美味しいと笑うじゃないですか。お客さんが笑う姿を見ると嬉しくなる。」

ー今後、他にもやってみたいことはありますか?

今は若い世代のお客さんが多いけれどシニアの需要も必ずあると思うので塩分を控えたものやあっさりした味のメニューなどを展開していきたいなと考えています。ファミリーレストランなので幅広い世代に楽しんでもらえるようにしたいです。

―すっかり頼もしい澤村さんですが、どういう人なら100本のスプーンで楽しんで活躍できると思いますか?

厳しい言い方かもしれませんが…その人次第だと思います。僕の場合は、100本のスプーンで働きはじめてから現場をこなす以外に、数字管理など経営の分野にも携わったりメニューも開発したりするようになって、それには責任もついてくるけど、やりたいことをNOと言わずさせてくれる環境だからモチベーションがどんどん上がっていきました。毎日があっという間で時間が足りないくらいです。美味しい料理を作って、美味しいって言ってもらえる。お金を稼ぐためだけじゃなくて仕事が自分の生活のひとつになっているなあって思います。

スープストックに比べてまだ認知度の低い100本のスプーンだからこその伸びしろもあると思うので、これからのブランドづくりも一緒に楽しめる人がいいと思います。

撮影:宮川大
取材・執筆:本間菜津樹

インタビュアー:本間菜津樹(Honma Natsuki)
沖縄県出身。大学卒業後、アパレルEC運営会社にて出店ブランドのサポート業務等に従事。その後地元の出版・印刷を行う会社に転職し、ものづくりに関わるうちにその楽しさを実感。自身でも文章を書くように。出産・子育てをするなかで親子の場づくりがしたいという思いが芽生え、100本のスプーンへ。サービススタッフとして勤務。

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