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蝋燭に灯る幽霊

声が聞こえなくなると
途端に君は世界から居なくなる
蝋燭の炎を吹き消すように見えなくなる
火の灯らない夜は
瞼の裏にちらつく炎の幻影が
なお眩しくてくらくらする

君は見えない国に棲む
声も姿も手に取れない
生きているのかさえ知らされない
霊界からおとずれる気まぐれな幽霊が
蝋燭に火を灯すのを待つ

君は小さな炎となって目の前に現れる
ちらちらきらめく熱い火だ
口にもこの胸にも入れられない
ずっと見つめてあたっていたい
けれどすぐに見えない国へと去ってしまう

幽霊さん 幽霊さん
僕に宿ってくれませんか
僕をあの世へ連れて行ってはくれませんか
けれど君は僕が壊れるのを良しと言わない
蝋燭に灯る炎と
見つめる僕との怪談を望むだけ

ねえ百物語を読み終えたなら
君は出て来てくれますか
僕を霊界へ運んでくれますか

ねえ君とまだ
百も話をできたなら

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