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珈琲と天ぷら

 時折、車で出勤中に信号待ちでうとうとしてしまい、後ろからクラクションを鳴らされることがある。びっくりするしそもそも危ないから、そういう時はコンビニに寄ってコーヒーを飲む。
 コンビニの人には悪いけれど、あのコーヒーが美味いとはあんまり思わない。冷静に味わってみると全然コーヒーの味ではないような気もする。
 それでもなんとなくコーヒーを飲んだ心持ちになるのは、茶色くて苦い液体を飲むと「コーヒーを飲んだ」と認識するシステムがこちらの脳内に出来上がっているせいだろう。
 だからコンビニコーヒーで眠気が覚めても、本当にコーヒーのおかげかどうかはわからない。コーヒーだと思い込むことができれば、麦茶を飲んだって同様に眼が覚めるように思う。

 義父が生前、「好きな料理は?」と看護師から訊かれた際、義母の揚げた芋の天ぷらと答えた。
 それで義父の通夜の際に義母が芋の天ぷらを作ってくれた。
 お供えして、みんなでいただいたのだけれど、なんだかイメージしていたのと違うようだった。小麦粉の代わりにホットケーキミックスを使ったのだという。
 これがこの家の味かと思ったら、妻と義弟が不味いと云って箸を止めた。
 確かに少し変わった味ではあるが、自分は別段不味いとは思わない。
 食べているうちに違和感もなくなってきたから、一人でぱくぱく食っていた。

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