押し付け合い、残忍な笑み（2023/03/31）

　ネルソン氏が、先日話し合った次年度の売上計画を得意先ごとに割り振った資料を持ってきて、「君、これでどうだね」と云う。見ると自分の担当する直営ECに随分無茶な割り当てがされている。

「君、これは無理だよ。会社方針で普通の営業とEC担当を掛け持ちして、営業の方に比重を置いているのだからね。これでネットの売上も伸ばそうなんて無理な話さ」
「そうかなぁ」
「そうだとも。全体、できると思うなら自分でやってみたまえよ」
「そんなことを言って。僕にネットができるわけがないじゃぁないか」
「できないことを人に無茶振りするのは始めからおかしいだろう」
「それは君、できない、の意味が違うよ」
「じゃぁ教えてやるからやってみろよ」

　結局ネルソン氏は「もういいよ」と云って、ECに割り当てていた内のいくらかを自身の担当先に引き取った。

※

　定時を回った後、畜山生太郎（ちくやま・しょうたろう）と総務のフグ田さんが社長室へ行った。
「君、いよいよだね」とネルソン氏が小声で云うので、「そうだねぇ」と返しておいた。
　30分ぐらい後、畜山は茫然自失のテイで帰ってきた。そうしてイゴールさんを呼び出して何やらヒソヒソやっている。
「あの様子じゃぁ、どうやら降格だね」とネルソン氏が言ってニタリと笑う。