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協調、同調、吹き溜まり

 高二で鳥居先生のクラスになった。
 一年時から鳥居クラスだった者を中心に、学年中のちょっと悪そうな者と、ロック好きな者を集めたような感じだった。全体、担任の要望がどこまで通るものか知らないけれど、どうも他のクラスに比べて意図的に集められた感が強かったように思う。

 最初のオリエンテーションで、先生は一人一人に好きな歌手は誰かと訊いてきた。そういうのからも為人ひととなりが見えてくるのだそうだ。
 BOØWYが好きですと答えたら「俺も。カッコええもんのぉ」と言ってきた。
 先生はあの時分まだ二十代だったろう。若くてBOØWY好きなら、きっと気が合うだろうと思ったけれど、フタを開けてみると存外様子が違っていた。
 この先生は何かにつけて一々熱く、それでこちらはどうも白けてしまうのである。
 殊に学校行事では、「俺もみんなぐらいの頃には行事とかさぼっとったよ。みんなが取り組んどるの見ると、首の辺がむずむずしてくるんよのぉ」と苦笑いして、「でも後になってそれを凄く後悔したんよ。みんなには同じ思いをしてほしくない。だから……」と来る。
 すると、一年からの持ち上がり組が大いに盛り上がり、悪そう組もつられて熱くなる。悪そうな癖に学校行事で熱くなるのだから、実際はそんなに悪くなかったのだろう。
 自分は、善い悪いは別として、学校行事などはいつもさぼるクチだったから、これには随分閉口した。
 最初から「全員参加だ。さぼるやつはしばく」とやるのだったら、こっちも堂々反発できる。ところが、シンパを煽って同調圧力で押してくるのだからやりにくい。
 何だかある種の宗教みたいで居た堪れず、結局行事はほとんどさぼった。

 三年生になると鳥居クラスからは外れた。
 鳥居クラスは三年でもやはり同じような顔ぶれだったが、そう思って自分のクラスを見るといかにもバラバラで、何の意図も感じられない。担任もあんまり主張しない人だし、きっと引き取り手のない者を押し付けられたのだろうと思った。

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