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Photo by
goldrush00
人間の目を持つ雉
娘が小学校に上がったばかりの頃、畑の間を歩いて病院へ義父のお見舞いに行く途中で、緑の大きな鳥に出くわした。
「あ、雉だ」
「雉?」
「ほら、あの緑の鳥だよ」
指差してやると、じきにバサバサと飛び立った。
雉は国鳥という割にあんまり見かけない。動物園で見たのを別にすると、これが人生で二度目の遭遇である。
一度目は家の前で見たから、恐らくこの辺りに住んではいるのだろう。
娘にはこの雉との邂逅が随分印象深かったようで、愛鳥週間ポスターの宿題で雉を描くのだと、鉛筆描きの下絵を見せてくれた。
何だか随分珍妙な雉だった。
全体、鳥というものは丸い胴体に小さな頭と足と翼が付いているのだけれど、この絵は頭と首と胴体が同じ太さだから、蛇かウツボに羽根が生えたみたいに見えるのだと教えてやったら、描いた当人がゲラゲラ笑いだした。
それで頭を小さくして描き直したところ、今度は直した頭部にどう見たって鳥のものではない、人間みたいな横長の目が描いてある。おまけになんだか面倒くさそうな目をしている。
あんまり口出ししても良くないと思って黙っていたら、妻が見て吹き出した。
近頃はそんな話を娘にすると、うるさいと云って怒りだす。
自分だって幼い頃の話を父がしてくるのを鬱陶しく感じていたのだから、娘の気持ちはよくわかる。一方で、あの頃の父の気持ちも今はわかる。
きっと娘にも後々わかるのだろうと思っている。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。