再訪と老人
何の集まりだったかもうわからないのだけれど、昔、山田さん他数人と電車に乗って出かけた。
切符を買う際、自分が一番前に並んでいたので、「後で払ってくれよ」と言いながら全員のを立て替えた。よく知らない人もいたので少し不安だったのを覚えている。結局、回収できたと思う。
電車を下りたら構内の改札を出てすぐの所にマグロ料理屋があった。
その店へみんながぞろぞろ入るのに自分もついて行った。そうして店内を通り抜けて、反対側の出入口から外へ出たが、「店内は通路ではありません」と貼り紙がされていたから、ちょっと気まずかった。
店を出ると芝生の広場で、それが目的地である。
何だか見覚えがあると思ったら、大学に入って間もない頃に懇親会をやった場所だった。
「俺、ここ来たことあるわ。あの時も間違えてこの店の中を通ったよ」と山田さんに言った。
山田さんは「ああ、あの時ね」と言った。自分の記憶ではあの時山田さんはいなかったように思う。随分適当な事を云う人だ。
広場に着くと、誰かが連れてきたじいさんの姿が見えない。
全体どうして老人を連れて来たものか判然しないが、放っておくわけにもいかない。みんなで探すことにした。
広場にもマグロ料理屋の中にも見当たらず、改札の前まで戻ると店の脇にひっそりとエレベーターがあった。あんまりひっそりしているものだから気付かなかったのだけれど、どうやら地下があるらしい。
エレベーターで下りるとそこにも店があって、何だか雑貨のようなものを売っている。
じいさんはその店の奥で大阪城の模型を眺めていた。狗井さんも一緒にいた。どうやら彼が連れ回したらしい。この人はいつも事を面倒にする。
ただ、狗井さんは最初の時点ではおらず、いつから入ってきたものかはとうとうわからなかった。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。