毛羽、スター・ウォーズ

　仕事に着て行く黒いジャケットが、近頃すぐに毛羽だらけになる。
　普段は職場の行き帰りにしか着ないので困らないが、外で商談したり店回りをする時に毛羽だらけでは、いかにも格好が悪い。だから100均で買ったエチケットブラシをポケットに忍ばせておいて、気付いた時にはシュッシュッとやることにした。これで一応きれいにはなる。
　ただ、問題はその頻度で、どうも一度着て脱ぐと、もう毛羽にまみれているらしい。起毛素材だからそうなりやすいのはわかるけれど、着る度にこれではいささか度を越している。
　全体、どうしてこんなことになるのかと云うと、最近ジャケットの下にセーターを着るせいなのに違いない。見た目にふわふわしたやつで、そのふわふわが毛羽になるのである。
　このセーターは、これまで着ていた毛羽の出ないカーディガンが破れたからとりあえず着ている。そういうことだからなるべくだったら着ないようにしたいのだけれど、どうもまだ寒いようだからやむを得ない。
　それを妻に話したら、妻はカーディガンを買えばいいと云う。

「セーターのせいで、毛羽だらけになるんだよ」
「カーディガン、買えばいいじゃない」
「だってもう三月も終わりなのだからね、今から買うのは何だかつまらないじゃないか」
「今だから安くなっているんじゃないか知ら」
「まぁ、いいんだよ。今は買わないと決めたのだからね」
「好きにすればいいわ」
「それはそうと、この辺りの学校では、卒業式の後で謝恩会はないのだね」
　つい昨日が娘の小学校の卒業式だったのである。
「何それ？」
「卒業式の後で近くの公民館に移動してね、飲んだり食ったりして、子供らがそれぞれ出し物をやるんだよ」
「そんなのあったの？　誰が主催するの？」
「PTAだろうね」
「初めて聞いた」
　自分はその打ち上げで、友人らとスター・ウォーズの劇をやったのを、今でもはっきり覚えている。映画好きな原田がやろうと云い出したのだけれど、メンバーで実際にスター・ウォーズを観たことのある者は、自分も含めて一人もなかったんじゃないかと思う。