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カサコソお化け

 このところあんまりいい流れではない。どうもめでたくないことが重なって起きている。目のことだってそうだ。
 ことによると自分がYouTubeで実話怪談ばかり観ている(聴いている)せいかも知らんと思い、試しに暫く止すことにした。
 ここ3年ぐらい、移動中は大抵そういうチャンネルで怖い話や不思議な話を聴いていた。止してしまうと途端に観るもの聴くものがなくなって、何だか手持無沙汰でいけない。それでもこのまま運気低迷しているよりはよほどマシだから、とりあえず止しておく。

 小学生の間は自分の部屋がなく、子供部屋を妹と共用していた。間取りに難のある家だったから母の鏡台も同じ部屋に置いてあった。
 ある晩、風呂を出て母と妹と部屋で何やら話していたら、入口でカサコソ音がする。そっちへ目を遣ると、自分の膝より低い位置に何だか白いものが移動して、壁の影に入って行くのが見えた。
 あの時分、近くの食料品店で菓子パンなどを買うと、ビニールのレジ袋ではなく白い小さな紙袋に入れて渡してくれた。把手がなく、パンメーカーの名前がピンク色で印刷されていた。
 その袋が風でカサコソと流れて行ったような按配だったけれど、もちろん部屋の中でそんな風は吹いていない。
 流れた先を覗いてみると、果たして何もない。
「あれ?」と言ったら母が「何してるの?」と問うてきた。
「何か白いものがおったんじゃけど……」
「何がいたの?」
「わからん」
「何もいないんでしょ?」
「おらん」
「じゃぁ、いいじゃない」
 そう言われたって、こちらは姿を見て音も聞いたのだからどうにも気になる。それで再び覗いてみたが、やっぱりそこには何もいない。
「何がいたの?」と今度は妹が机の影から顔を出してきたのを、「何もいないんだからいいの」と母が言ってそれぎりになった。

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