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mirecat
裕福(2023/10/09)
28の時、知り合いの飲み屋で4人の常連客に紹介された。みんなフリーのライターなのだと云った。
手近にいた2人は自分より2つばかり年上で、ひとしきり語り合って、先に帰っていった。
後に残ったのは、やはり同じぐらい年格好の女と、ネルシャツを着た男だった。
男は何だかどんよりした様子で、「僕はね、今年51なんですよ。だからベテランだって、彼らは持ち上げてくれるけどね、実際、年食ってるだけなんですよ。不安しかない。こんな生活だから結婚もできないしね。このシャツだって、ゴミ捨て場から拾ってきたんですよ」と言った。心底どんよりしているように見えた。
「本当なんですよ」と女が言った。
※
妻が高校時代からの親友らとお茶をして、随分凹んで帰ってきた。20年前の服を今でも着ていると云ったら笑われたのだそうだ。
妻は元来物持ちが良く、若い時分に衣服をたくさん所有していたのが、家計のことと相俟ってこうなっている。
今日会ったのは会社役員と看護師だそうだから、どちらも稼ぎがいいのだろう。
特に会社役員の友達は、自分も結婚以来家族ぐるみで付き合ってきて随分いい人だと認識していたが、他人の身なりを笑うようでは感心しない。
近頃はどういうわけか、この人の息子さんの服がほぼ新品のまま自分に回ってくることがある。笑われてもつまらないので、着るのは止すことにした。
こういうこともあるから、同窓会的な集まりに自分はあんまり寄らない。
よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。