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蠱毒を作る仕事(2023/09/01)

代表的な術式として『医学綱目』巻25の記載では「ヘビムカデゲジカエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。このを採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」と記載されている。

蠱毒 - Wikipedia

 ここしばらく、色んな要因で職場の空気が随分どんよりしている。

 怒鳴ることを仕事だと信じて常日頃から怒るネタを探している畜山生太郎(ちくやま・しょうたろう)などは、この空気で水を得た魚のように、あっちでイライラこっちでイライラといった感じでいよいよ面倒くさい。
 今日はそれで、あるネタを見つけてネルソン氏に噛みついた。

「お前、話があるんだから立てよ。偉そうに座りやがって」といきなり詰め寄り、それに対して普段は温厚なネルソン氏が「は?!」と一瞬噛みつき返しそうな気配を見せたものだから自分は一瞬「おっ!」と思ったのだけれど、すぐに抑えた様子で大事には至らなかった。反撃したら割って入らにゃいけんよぉねぇ、それはちょっと面倒くさいのぉ、2人で勝手にやってくれんかのぉ、と思っていたからほっとした。

 こういう場合、ネルソン氏はいつもその場を神妙にやり過ごして後から自分やトミーに文句を云って同意を求めてくる。
 気持ちはわかるが、残念ながらその文句は大抵ただの感情論なので自分もトミーも「そうだねぇ」と聞き流す。感情論で糞味噌に貶すのなら畜山と変わらない。というか、陰でやるぶん余計に惨めな感がある。これに同意してしまうと、こちらも惨めな仲間になりそうでいけない。
 今回もその流れで来たから、「そうだねぇ」と流しておいた。本当は相槌を打つのも面倒くさかったが、あいにくトミーが不在だったから黙っておくわけにいかなかったのである。

 ひとしきり噛み付いて満足した畜山が、まだ怒っているテイで事務所から出て行こうとするところへ、今度はフグ田さんが「ちょっと畜山さん、どこへ行くんですか?(以下略)」と、別件で噛み付いた。

 この事務所で蠱毒ができそうだと思った。

よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。