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”新しい”アイディアは、既存の組み合わせでできている

私はデザイナーということもあり、比較的新しいアイディアを出すことが得意である。
別に考えようとしなくても、頭の中に置いてある物事が勝手につながって出てくる。

なので、この記事
https://note.com/simpeiidea/n/n52b42788bf57
を読んで、アイディアを出すこと=億劫 という発想にびっくりした。

なぜ億劫になるのか分析してみる。

おそらく、
①未知なる何かを創造しようとしているから

②評価軸が未知だから
だと考えられる。

①未知なる何かを創造しようとしているから とは、
例えると、受胎告知&無性生殖でクローンではない普通の子どもを産むようなもので、哺乳類なら現実的にはまずありえない。
通常は、「既存」の染色体を半分ずつコピーして新しい子どもが生み出される。

つまり、「新しい」個体は、「既存」の個体から生まれるものである。
既存の個体なしに、新しい個体がどこからともなくポンっと出現したら、全世界でニュースになる。そのぐらいのレベル。

そして、新しい個体の数は、既存の個体の数に左右される。

単純にパターンが何通り作れるかの問題で、当たり前だが既存の個体パターンが多い方が、たくさんの異なる組み合わせパターンが作れる。

したがって、①が要因だとすると、その根本は、
・そもそも無理なことをしようとしている
・既存のパターンが少ない
となる。

既存のパターンとは、経験値にイコールする。

経験値とは、知識量やキャリア、専門性などもあるが、アイディアの組み合わせの場合、自分の見聞きしてきたワンシーンワンシーンがすべて経験値になる。

渋谷のスタバで隣の席に座ってた人が話してたこと、その様子、店員さんの動き、メニュー、味、価格、雰囲気、客層、それに対して思ったこと感じたこと、すべてがアイディアを構成する成分になる。

それをひとことで表す言葉が、「観察力」「考察力」なのかと思う。

スタバのオペレーションがどのような流れで何がよかったかを知っていることで、全然関連性のない不動産や電気屋、イベントなどのジャンルにかけ合わせることで、「それは新しい!」と言われるような1パターンができあがる。

アイディアを考える段階になってはじめてこれをやるのは時間もかかるし当てもないのでキツい。

日頃から観察して、これはいいな、良くないな、こうしたらもっといいのでは?を考察しまくるだけで、相当の引き出しができる。

空の引き出しからは何も取り出しようがないので、とにかく引き出しを増やす、中身を詰めることで、ようやくその中から取り出せる状態になる。

その状態になったらあとはそんなに難しくなく、
色んなパターンを組み合わせたり、ある要素を引いてみたり、変形させてみれば結構な数のアイディアは自然に生まれる。

情報のつながりが多いほど、物事が覚えやすく・とらえやすくなるので、勉強にも適している。
(勉強が得意な人はこの引き出しが比較的多い)

ちなみに、観察力を鍛えるには、デッサンが適している。
人間の脳は、今必要のない情報を自動的にシャットダウンする性質があり、何か1つのことに集中するには効率が良いものの、今いらない情報を取ろうとしなくなることで引き出しの数が大幅に減少する。

デッサンは見たままをその通りに再現するものなので、細部をシャットダウン・ショートカットせずにすべて正確に見る必要がある。

「思い込み」というのはとても効率が良くて、物事を細部まで見なくてもそれなりに認知できて便利だが、デッサンはカメラのように見たままを自分で再現するものなので、もし実物と同じでない部分があれば、それは「思い込み」で描いている部分であり、どのぐらい細部をシャットダウンしているかが目に見えてわかる。


もうひとつ、②評価軸が未知だから 
というのは、求められているのが何かわからず、何を導き出せば正解なのかがわかっていない→正解を出しようがない、のもあるように思う。

アイディアを求める人やユーザーは、大体、なんでもいいから新しいものが欲しいのではなく、何らかの課題を解決する手段を欲しがっている。

つまり、本当の「新しい」ものはそこまで求められていないことが多い。

既存の手段では何か問題があるから、他の手段を求めているだけである。

車マニアや愛好家でない限りは、今までに見たことのない斬新な新作が欲しいというよりも、燃費が悪くなってきたから新調したい、とか、乗り心地がもっと良いものが出たので新調したい、といった「新調」という意味での「新しい」が多い。

そういう文脈では、突拍子もないアイディアは求められておらず、実際に求められるのは「今よりいいもの」「微妙な部分を解決するもの」ぐらいである。

それなら課題の調査や競合の仕様などから論理的に導き出しやすく、さらにプレゼン相手も納得しやすい。


本当に真新しいものは、誰も理解しづらいのでなかなか伝わらず、「なんかよくわからないけど、それうまくいくの??? 誰か欲しがってるの???」の「???」で終わることも多い。

そこにチャンスがあることもあるが、その辺りは実行してみないと自分以外は誰も分かりようがないので、自分で実現できるならそれもアリだと思う。


また、依頼側でなんとなく浮かんでいるアイディアがあるけど、ジャストアイディアなので自信がなく、他の人からも支持があるなら、とか何か確証できる根拠が見つかったら、とか、相性占いを試しまくる女子のような、背中を押して欲しい系のこともある。

でもそんなことは言えないし、もしかしたらもっと良い方法があるのではというささやかな期待を持って、「新しいアイディアを考えて」とアウトプットする。
このケースは、答えの方向性はすでに決まっている。
(某一般コンペに多い)


したがって、大体のアイディアは、見えていないか見ようとしてないだけで、その辺に転がっているありふれたものの組み合わせにすぎず、
本当に未知なる新しいものは誰もそこまで求めていないのである。


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