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フリーランスのデザイン料金の決まり方

フリーランスデザイナーの皆様はデザインの料金、どうやって決めてますか?

おそらく時間×手間と相場感、相手の希望感などをふまえて、このぐらいかな?と計算してると思いますが、
デザイン経験のない発注者側がこれをイメージするのってなかなか難しいと思います。

デザインしたことのない人にとっては、アウトプット起点でしか測れないので、
シンプル=簡単=安い みたいなイメージになってしまうのも仕方ない気がしますが、どうやって決めるかが分かればお互いに納得しやすいだろうなと思ったので、どちらかというと非デザイナーさん向けに、アウトプットの種類ごとに分けてみます。


デザインの種類は大きく分けて、
紙媒体のグラフィックとWEBやアプリのUI/UXがあります。

かかる時間・手間のみでいえば、紙媒体のがだいたい安いです。

紙媒体だと、WEBのように「ユーザーが操作する」ことがあまりないので、
すごくざっくり言えば、考えないといけないところ(変数)が少ないので。

紙媒体で時間がかかるところは、主に
・単純に量が多い(30ページ分とか)
・量もパターンも多い(全部違うイメージのパターンで30ページとか)
・複雑なイラストを一から全体に描く、装飾素材を探す
・コンセプトが定まっていない&こだわる(→コンセプトを分解して可視化するのに時間がかかる)
・構成が固まっていない
・描くものの難易度が高い(サーバーの仕組みをわかりやすい図にするなど)

で制作時間が増えていきます。
量が少なくても下半分の点が多いと、数字がほとんど埋まってない数独のように答えを1つに絞り込むのが大変なので、手を動かす以外にも、ああでもないこうでもないと考え込む時間やアイディアをリサーチする時間が結構かかってきます。


WEBやアプリだと、上記に加えて、
・ユーザーの理解(どんなユーザーがどういう流れで使うのか)
・Apple等のガイドラインの理解(一般的に推奨されるUIの知識)
・トレンドのUIの理解(ユーザーの技術習熟度やターゲットに合ったグラフィック)
・素材の書き出し
・コーディングの考慮
・ブランディング考慮(競合他社との比較、印象や目指す方向性の統一)
・操作ミスやエラー時など起こりうる操作パターンごとのデザイン、もしくはそれを防ぐデザインを考える

などで時間がかかります。

理解や考慮の部分は、そもそもの知識や日頃の情報収集が大きいので、実質手を動かす時間がそれほどかかっているわけではないですが、ピカソの有名なエピソードと同様の類です。

ある女性がピカソに絵を描いてほしいと頼むと、ピカソは彼女に微笑み、たった30秒ほどで小さいながらも美しい絵を描きました。
そして、彼女へと手渡しこう続けます。

「この絵の価格は、100万ドルです」

女性は驚きました。
「ピカソさん、だってこの絵を描くのにたったの『30秒』しかかかっていないのですよ?」

ピカソは笑います。
「30年と30秒ですよ」

なので、何も考えずに気の向くまま作れば、実際に手を動かす時間分だけで良いので安く済みます。

ここまでは一体何に時間がかかるのか、をベースにしましたが、通常はそこに単価がかけられます。

単価は人ごとで全然違うので聞きづらいところだとは思いますが、
大抵はクオリティーに比例します。

どれぐらいの金額でどれぐらいのクオリティーなのか、見当もつかない方のために、
自分自身もデザイナーで、かつデザイナーさんディレクションしてきた肌感をまとめてみます:

●紙媒体、バナーやアイコンの制作

【時間単価1000円前後レベル】
細かく指示を送り、何度も細かい修正をすれば、センス次第でそれなりのアウトプットが得られる。
あまり細かい考慮やハイセンスなものは要求できない。(要求しても応えてくれない)
一言でいうと、拙速なケースが多い。

【2000円レベル】
半年〜1年程の経験はある人が多いので、その人の得意な分野はそれなりに良いアウトプットが得られる。単価感的に薄利多売でやっている人が多いので、デザイナーさん自身が興味のない制作物だと受け身・時短・手抜きされやすい。完全にお任せで頼むのはちょっと危ない。

【3000〜4000円】
少なくとも2〜3年程の経験はある人が多い感じ。その人の得意な分野でなくても、ある程度広範囲に対応できる人が多い。ディレクションがあまり良くなくても、それなりに整ったものが仕上がる。制作に当たる”常識”は言わなくてもデフォルトで考えてくれる。1から10まで指示をしなくても、デザイナーさん側からヒアリングして工夫してくれることも多い。
まずそこまでズレたものはできないので、全然違うものができてしまったら、ディレクション力不足なケースも疑われる。

【5000円以上】
特定のタッチやジャンルに狭く深く特化している人が多い。
専門店ゆえの高さか、知名度による高さか、ディレクション込みの制作かという感じ。確実に経験豊富。ポリシーの強い人が多いので、広く浅く早く、のような制作や、逆に指示通りに動いてほしい、みたいな依頼は向いていない。細部にこだわる人が多く、質>>>>量という印象。


●WEBサービス、アプリ

【時間単価1000円前後レベル】
細かく指示を送るか、できるまで待つか、で自分でやったほうが早い場合も。テンプレートデザインのカスタマイズぐらいなら対応する人もいる。まだ実績がない人が多い。連絡が不規則だったり、フェードアウトする人もいなくはない。

【2000円レベル】
1年程の経験はある人が多いので、その人の得意な分野はそれなりに良いアウトプットが得られる。単価感的に薄利多売でやっている人が多いので、デザイナーさん自身が興味のない制作物だと受け身・時短・手抜きされやすい。言われなければ特に工夫しない人も。
仕様・構成・方針がすでに決まっていて、あとは見た目を整えるぐらいなら十分かもしれない。
紙媒体のデザインから転向する人も多く、コーディングの理解やシステムの動きを考慮して作る人は比較的少ないゾーンなので、ランディングページ(LP)や普通のWebサイトなどが合っている。
人柄にも幅がある。

【3000〜4000円レベル】
少なくとも2年程の経験はある人が多い感じ。得意不得意があまりなく、WebサイトでもWebサービスでも、割となんでも広範囲に対応できる人が多い。(なんでも対応しすぎて、何が得意なのか絞れない人も多い)
やったことがないことでもチャレンジしてみようとする人も結構いる。
コーディングまでできる人or理解できる人も割といるので、実装の無茶なデザインやユーザー目線が欠けたデザインは上がって来づらい。
また、ちょっとしたバナー・アイコンを作るとか、名刺とか、画像編集、動画編集も結構いい感じに対応できる、といったマルチで器用な人が多い。(なぜかイラスト描く人率は少ない?)
オーソドックスな制作物だとスピードも比較的早い。

【5000〜8000円レベル】
大体3年以上は経験がある人が多く、自分でデザインを作る人は少なくなり、ディレクションに転向することが多いゾーン。
純粋に作るのが好きな職人タイプよりも、利益率などを考えて動く人が多くなる印象。
日頃から情報収集や新しいもののキャッチアップもしている人が多いので、一人よがりのデザインではなく、市場・トレンド感・類似ケースの事例をふまえて、客観的に根拠あるデザインや、CVのしやすさなどビジネスサイドに貢献することも含めて、コンサルティング的にデザインを考える。
何がしたいかさえ伝えれば、あらゆる点を考えて色々と適切なものを提案してくれる。
逆に、目的感が弱いもの(なんとなく必要だからなど)や、作って終わりのものはあまりやろうとしないので、プロジェクトベースで中長期的な目標(新規事業のプロダクトリリースや改善、大幅なリニューアルなど)を達成する案件が向いている。

(※ 個人的な印象ベースなので、異論受付けています)


結局のところは、発注側受注側のお互いが納得すればそれで問題ないのですが、
大体このぐらい感を把握していれば、期待のズレが起こりにくくなると思います。

デザイナーさんは、いくら欲しいかももちろんですが、他の人がどのぐらいのアウトプットを出す中で、自分は何をどのぐらい期待されているのか、それに対してどのぐらいで応えられるのか発注側目線で考えると、むやみに安請け合いせずに交渉しやすくなるかなと思います。


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