十二月二十日 快晴

我が町にもサンタが来る!というので、家族で駅前まで行ってきた。
我らがホームタウンは地形の関係からか、年中強風が吹いており、特に冬はひどい。
今日も例に漏れず、木枯らしが吹き荒ぶ中を歩いたのですっかり冷え切ってしまった。
凍える体で商業施設に入ると、暖房の温かい空気と共に、向こうから赤い服を着た恰幅のいい中年が歩いてきた。
サンタだ!と娘と一緒に喜び、その後ろについて歩いている子供たちの列に並んでみた。皆はしゃいでいる。
しかし、なんだか様子おかしい。サンタ、めちゃくちゃテンションが低いのである。
赤いベルを持ってジングル々々鳴らしてはいるものの、目も笑っていないし、どちらかというと「不機嫌」とか「仏頂面」と言った方がしっくりくる様子である。
サンタは建物外の歩道なのか何なのかよくわからないスペースの一角で足を止め、振り返って子供たちに何かを配りはじめた。
列は急速に捌けていく。娘の番になった。
一緒に赤い男のそばまで行き、写真を撮っていいか確認した。
サンタは答えなかったが、スタッフが「いいですよ」と言ったので、iPhoneを構えた。
サンタ、全くポーズを取らない。どころか、もう娘の次の子に何か手渡している。
我ら親子は「冷たいサンタだったね…」と愚痴をこぼしながら列から離れた。
娘に、何もらったの?と聞くと、めちゃくちゃ小さな小分けパックの麦チョコを見せてくれた。
「外人だから日本語わからなかったのかなあ」
「ううん、どうぞ、って言ってたよ」
サンタ、話によると午前、昼、午後で出てきたらしく、我々が行った時は三巡目の午後だった。寒いし、疲労困憊していたのかもしれない。
しかしありゃないであろう。偽物とはいえ一応サンタという体で来ているのだから、任務を全うして帰って欲しかった。
夜は買って帰ったロティサリーチキンを食べながら34丁目の奇跡を見た。
「この衣装を着ている時は、崇高な職務についてる自覚を持て」みたいな台詞が出てきて、全くもって今日のサンタに聞かせてやりたい話だと思った。
子供の頃テレビで見て良かったなぁと思った映画だったので、子供たちにも…と見せたのだが、サンタの存在の是非を問う話だったので微妙な年の娘には微妙すぎる話だったかもしれない。しかしまあ、起こってしまったことは仕方がない(テネット脳)。


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