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はじめに。

 シェア型書店の運営人として、一番良く言われること。
「素敵な場所ですね!どうして始めたんですか?」
恥ずかしながらその質問に端的に答えることができずに、あっという間に2年が経ってしまいました。
センイチブックスは本屋ですが、本を売る以外の価値があまりにも大きく広すぎるし、またそれは日々新しく生まれ続けているので、言葉で象ることがとても難しい。
何の先入観もなく、まっさらなキャンバスに、多様な人の選書の「色」で彩る世界はどんな本屋になるのだろう、と皆さんと歩んできた2年間。
本当に色々な方が関わって、見せ連れて来てくれた今日という世界に、まずは感謝の気持ちでいっぱいです。
空箱だったマンションの一室が、自身の生き方を見せることで、社会に存在する意味を日々濃いものにしてくれている。このことがはっきりとした今、言葉というツールで私たちの根っこにある想いや、センイチブックスの素顔について表して行きたいと思います。

 この2年で得た確かなことは、
シェア型書店は「本への愛が深まる」「(本と、他者と、自分自身との)対話が増える」ということです。
普通に過ごしていたら出会わない人達が、普通に過ごしていたら出会わない本たちへ向ける愛情表現を目にすることは、やっぱり面白い!
(棚主目線で言うと、普通に過ごしていたら出会わない人達にそれが伝染した時も。)
この「愛ある対話の自然発生」は、人がつくる本屋センイチブックスならではだなぁと思います。

 また、読書は、自分の内側に居る自分と、今ここに居ない人との縦方向の対話です。
それに加えここでは、本棚の向こう側に居る棚主や店番中の棚主と、横方向へも対話が広がります。その広がりは「自分自身への問い」の幅や深みに繋がっているように感じます。それだけに、本棚が社会へと発信する「ものごとや想い」が、私自身の中の問いとなり、立ち止まって考えてみたり想像してみたり、とにかくたくさんの気付きの連続でした。

 私たち運営人は本に関することを生業としてきたわけではありません。ごく普通に、教育を受け、会社員をし、企業の歯車とやりがいとを行き来し、外国でマイノリティとして社会の反対側で生活してみたり、出産はやはり命がけなんだと自分の体と心の声を聞いたり、楽しい思い出しかなかった学校生活に、やりづらさを感じる我が子との向き合い方に悩んでみたり、子どもは勝手に育つと言い切れるものではないという考えを持ったり、多くの皆さんと同じような経験を日常にしている私たちです。

 海の外では戦争や紛争が絶えず、内では生きづらさや孤立を救うべくコミュニティーや居場所をつくる活動が増えているものの、それもまた見えない壁を増やし、分断を複雑化していると言わざるを得ないのかも知れません。     ただ、そんな中にも本に希望を見出したいのです。
違いの中に共通や繋がりを見出せる機能が「本、言葉」にはある。
あの人とは考え方が違うけれど、ここまでが共通している、という認め合える部分を発見する姿勢のようなものは、多様な本とそこに人が介するこの実空間で体現できることでもあります。
「シェア型書店づくりに、自分らしい、よりよい生き方の答えがあるのではないか」ということに私たちは気付き始めています。
一市民が本屋をつくることは、今は(しばらくは)世の中の「少数派」である為に、これまで同様に簡単にはいかないかもしれません。
でも、その答えを探す旅そのものに大切なことが詰まっていると信じています。

 これからも、皆さんとこの本屋づくりと、人生を楽しむ旅を続けて行けたら!と思います。




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