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ソフト業界への入社を希望するあなたへ

 ソフト業界への入社や転職を希望する方は増えているようですが、どのような仕事をしたいかにより、どこの企業に入るかは重要です。
 門戸が広すぎる業界なだけに、プログラムを組む仕事に就きたいというだけでは、後々の人生フイにしてしまう恐れがあります。

 それは、業界構造が関係してます。
 考え方によっては、行かない方がベストな業界でもあるでしょうし、ならない方がよい職種かもしれません。


1.まずは業界構造の話 

 業界の旧態構造に話になってしまいますが、ソフトウエア産業は、建設業界と比喩されて話をされます。
 それは、ピラミッド構造。

無題

 ざっくりとした図ですが、元請け下請けの構造になってます。
 しかし、昨今ITを自社サービスとしている企業が多くなってもいますので、この旧態構造が全て当てはまるわけではありません。規模が大きくなればなるほど、この傾向が強いと察してください。

 もう少しざっくりと書くと、商売なのですから客がいるわけですので、こんな感じになります。

無題

 元請けというのは、建設業界でいうところのゼネコンです。なんらかの仕事、つまりプロジェクトにおける元締めです。客からすれば、総合窓口です。そこが、実際に施工する業者に依頼して建設するのと同じ構図です。

 規模が大きくなったり、自社で賄えない仕事となると、下のような構図になります。

無題

 中間業者が存在するということですね。
 勿論、その中間業者も施工することは十分存在します。
 ですので、考え方として数通りあり、
(ケース1)中間業者が実開発企業に仕事を丸投げ
(ケース2)中間業者の人手不足等で、実開発企業にも仕事を一部依頼して協業
(ケース3)中間業者が持つ技術では対応できない箇所を、専門ノウハウを持つ企業に依頼して協業

 という具合です。

 ここまでは、幾分小規模なプロジェクトであり、大規模となると下図になるのが通常です。

無題

 私が新卒で働いた企業が請け負っていたプロジェクトはこんな感じ。
 位置づけは2階層目で、実質の開発全般を一から専属的に請け負ってました。
 そして、下請け企業に一部を発注したり、常駐してもらって協業というケースもありました。
 また、転職数社において、ある企業では3階層目で、開発工程のみのある部分の開発のみだったり、2階層目からの請負で4階層として開発のほんの一部を請け負い、お金は3階層目から頂いたという経験もしました。

2.IT業界で働く事を希望する前に

 このような構図の元、これからIT業界で働く方は、何をしたいか?、どのような仕事をしたいかにより、どの位置で働くかが重要になってきます。
 とはいえ、先に書いたのは旧態業界モデル。
 今はWebサービス企業や、自社ITサービスを力に入れている企業もあれば、フリーで働いても十分に食べていける時代でもあり、エンジニアの働き方は幾通りもできてます。

 その為、行きつく先は、
・どのようなモノづくりをしたいのか?
・どのような働き方をしたいのか?
 この二点に行きつくのだと思います。
 この二つがぶれていると、入社後失敗となるか、その後のキャリアに大きく影響します。

 但し、会社で働くという事は、壁が存在します。

1)新卒採用のみか通年採用しているか

 大手Sierの場合、通年採用はあまりしてません。
 よって、新卒で入社する道しかないと考える事になります。
 スポット的に中途採用が発生しますが、それとていつかは相手次第ですし、相応のキャリアを求められますので、異業種や下層下請けからの転職は、まず無理と考えるしかありません。
 但し、方法として、大手Sierの子会社孫会社に入るという手はあるでしょう。しかし、その場合でも通年採用しているかです。

 また、常時募集している大手ソフト会社を見かけますが、会社によっては、Sierと認めてない競争心の高い企業もありますし、内情は、下請けか最悪SESと呼ばれる派遣形態企業であるのがほとんどです。
 但し、大手独立系の場合、入社する拠点毎に異なる特質を持っているのがほとんどです。本社で仕事するか地方で仕事するかで、内容が変わってくるケースが多いです。
 ですが、いずれにしても通年採用している独立系は、離職率が高い企業と思って間違いありません。

2)学歴、職歴、年齢

 どこの企業でもそうですが、例えば、大卒以上、経験者のみ、35歳以下といったような条件があります。
 よって、入りたくても入れないご自身の壁が存在します。

 業界的に、下請けに行けば行くほど、この壁はなく、門戸が広すぎる業界とも言えます。とにかく様々な出自の人がいる業界です
 人はいるのに、昔からIT人材不足と言われてます。
 不足と言われる所以は、相応に対応できる人材が少ないという事であり、これは門戸が広すぎる事と、相応の経験が踏めない業界構造か会社の扱い方に問題があるとみてます。

 実際に最初の企業以外は、非上場の企業で、ある会社では、開発企業なのに数年間、開発らしい開発を全くしてないという社員がいたことに驚いたことがありましたし、何年もテスターやコールセンターのヘルプのような仕事で客先常駐している社員がいた企業もありました。
 また、派遣経理職から開発部門に移り、全くのPG経験もないのに、いきなりSEとして客対応と一部の開発をさせた会社にもおりましたが、もう目を当てられない状態に遭遇したこともあります。これは、もう会社の扱い方に問題がある悪例です。

3)入社後のコース意識

 ソフト開発企業の場合、その会社の業界ポジションによっては、できない仕事があります。
 最たる例は、上流工程に着手できるか?という点があります。
 下層に行けば行くほど、上流工程の経験を積む機会はありません。一生請負プログラマーです。しかも、プロジェクトの最初から最後まで投入される機会はなくなります。つまり、一時的な派遣要員扱いというわけです。

 また、多くの下請けでは、必ずしも自身が欲するプロジェクトにアサインされるとは限りません。
 その点は、営業職の腕にかかっているとも言えますが、元請けやお客さん次第で現場であるご自身が、どれだけ話すポジションにいるかにもよります。営業職依存でなくご自身が仕事を取ってくるというわけですが、あまりにも客と開きがあるポジションですと無理でもあります。

 加えて、大手メーカSierでは、ほぼ専属的に発注を出す下請け企業というのが選別されているのが普通です。その優先的下請けになるには、各社で条件が決められてます。それにより、ある分野のシステムにおいては、この会社というようになってもいるわけで、そういう下請け企業に入れば、ほぼ自社開発の体制がとられており、特定分野に長く従事することが可能です。大手Sierよりも、開発のノウハウが溜まってもおります。
 逆にそうでない下請けの場合、その優先的企業に選別されるよう企業努力されているか、優先的企業に下請けとして仕事を貰う経営をしている事となり、いわゆる協力会社という位置づけで入り込むか、一時的雇用で常駐するかになります。
 ここで問題になるのが、偽装派遣という言葉であり、昔はどこの会社でもやっていた違法労働の形でした。 
 これをなくすために特定労働派遣という免状を取得して、経営することになりましたが、確か数年前にこの法律もなくなり、派遣法の改正で禁止となったはずなのですが、未だにこの労働経営形態はなくなっていないようです。

 他方、自社サービスを展開している企業や社内SEの場合、自社でその手の仕事に就く事は可能になりますが、会社によっては、ジョブローテーションが存在します。
 よって、永続的にエンジニアリング的仕事に就けないケースもありうるということです。
 社内SEの場合、まず新卒で募集している企業は皆無に近いです。
 たまたま情報システム部門に配属されただけであり、数年後は別職種に異動の連続となり、転職を考慮した場合、スキルもキャリアもIT企業からの転職組と競争するにおいて、かなり低いスペックでの競争となりえます。

 採用側において社内SEと称して、実際は自社勤務開発というだけの虚偽と感じる募集ワードを見かけます。
 ブログでも自社開発であるだけで社内SEと勘違いされる方がいるようです。
 社内SEは、あくまでも自社のシステムに従事する人を指します。
 何らかの請負をしている以上、社内SEではありません。

3.ITエンジニアとして働くに際して

 門戸が広いだけに、業界への入社は敷居が低いです。
 但し、「安ければ安いなりの商品」の言葉通り、「その程度ならば、その程度の企業しか入れません」とも言えてしまいます。
 また、転職においては、年齢はどの業界も関係しますが、IT業界においては、年齢関係なしという企業は多いです。
 やる仕事は難易度が高そうに感じる反面、敷居が低い業界でもありますので、安易に転職成功例を鵜吞みにされない事を望みます。

 参考にされるのであれば、
・その方の学歴職歴スペック
・その方の年齢
・どのクラス、どの業界ポジションの企業に入社したか
・その方の業務ポジション

 この4点をしっかり見極めたうえで、ご自身の今のスペックと照らし合わせて、就く仕事にありつけるかを評価する必要があると感じます。

 大学出て建築学学んだのに、ニッカポッカ履いたにーちゃん達と一緒になってコンクリこねる毎日送りたいですか?。
 それと同じです。
 あるいは、週末は家族と過ごしたり、趣味に興じる時間を手放してまで、行く業界か?という事も、よく下調べをして入社されることを望みます。

情報提供や考え方、そしてこれまでの苦々しい経験での対価として、ありがたく頂戴致します。