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雨の日には冷えたスプーンを一期待しすぎたプリンアラモード一

※お立ち寄り時間…5分

羨ましい

生まれて初めてそんな感情を持った。
育児ができる父母が、夫が羨ましかった。

その時、私は、「北朝鮮に攫われるんじゃないか」と思うくらい、心が弱っており、ミルクを飲ませる隣で、彼の体をマッサージしたり、お腹を撫でたりしていた。

それが、その時の私の精一杯の育児だった。

病院に行けば、当たり前のように我が子を愛おしそうに抱きしめるお母さん達がいて
自分も早くそうなりたい、全力で育児ができなくて悔しい、と毎日の様に泣いていた。

母から「やっぱり、寂しいのかしら」と言われるたびに、自分が責められている様で、消えたくなるほど落ち込んだ。

辛い気持ちが体中に広がって、心の形がねじ切れそうになった時、ぽつり、父に本音を伝えた。

すると、父から言われた。
俺は、栞帆が羨ましいよ、と。

いくら頑張っても、母親にはなれない
俺は、産んであげられないから、と。


いくら頑張ったって、人口は増やせないし
いくら頑張ったって、母乳出せないし。

みんなできることは限られてて
その中で全力を出すことが大事だよ。


自分に期待しすぎていた。

彼に関することは全部してあげたい
隙間なく愛してあげたい、と。
けれども、育児はチームプレイで、目の前の自分ができることをすればいいんだと。

1人ではなく、みんなで包んで愛してあげればいいのだと。

私にできることって?
ほんの少しだけ前を向いて、父につぶやいた。
すると、父は、意味ありげに数分黙り込んでこう答えた。

とりあえず、綿棒浣腸かな?
俺は、うんち発射が怖くてできないからさ。
甘いものでも食いにいくか?


久しぶりに、笑いながら泣いて、食べて、心が軽くなったのだった。

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