長い夢を見た……
とんでもなく長い夢を見た。長編SF小説の、登場人物になったのだ。
舞台は、日本のとある寒村。僕は都会生活から挫折して故郷に戻った、しがないシンガーソングライターの役どころらしい。
美人の妹が一人。彼女は女子大を中退した後、実家に戻り、寂れた寒村立て直しのために、村役場で働いている。
家族は他には祖父と祖母。両親は疾うに亡くなっているらしい。
僕にして都会のグータラ生活で鈍った肉体に、野良仕事はキツカッタが、夕餉の後、大都会では一顧だにされなかった歌とはいえ、得意の弾き語りに間の手も入り、濁酒で酔うの日々は、いっそ充実の時間であった。
長閑な……そんな田舎生活を続けていたある日、裏山にUFOが着陸。
宇宙人の来襲か?
確かに、村のあちこちで、異形の宇宙人らしき姿が目撃されるのだ。
そしてもついには我が家にも……
しかし……当の宇宙人、てんで冴えない、安手の着ぐるみで異形を演じているコメディアンに似た。
それを暴いたのが、気の強い我が妹なのだ。
……宇宙人にビンタを食らわすシーンだけは覚えているのだが……
囲炉裏を囲んで、着ぐるみを脱いだ宇宙人の代表という生き物(人間そのまま)との会談。
話によると……当の宇宙人、かって古代文明を作り上げた、元来は地球の人間だという。高度な科学を発展させた部族というが、彼らを周りの無知蒙昧の輩は「悪魔」と断じ、理論的「科学」ですら「魔術」と貶め……ついては、これに対抗するために、もろもろの「神」を捏造したという。ついては、「悪魔」調伏を示し合わせ、それぞれの「神」の腕比べとばかり、序列を競い……結果として、世は戦に明け暮れたという。まさに、歴史が教えるままであった。
いずれにしても、戦に明け暮れはじめた愚かな人類に嫌気がさして、彼らは地球からおさらばしたらしい。
そして、辿り着いた宇宙の辺境で、平和な生活を営んでいたというが……その第二幕ともいえる理想の人類にも、危機が忍び寄る。
そう。すべての戦を「悪」と決めつけ、平和を実現したはいいが、ついには男と女にまつわる戦も否定……あまりにも相手の気持ちを思いやるあまり、恋愛感情すら衰退するに至ったという。結果、醜い欲望の権化たる性欲を否定し……夢の理想郷は、目睫に死を待つ老人ホームの様相とのことであった。
かかる状況を憂いて、理想郷を飛び出したのが、かの宇宙人らしい。そう。彼は失われた「愛」の根元を求めて、かっての故郷である地球を目指したものと知れた。
「みなさん、どうぞ教えて下さい。『愛』とはいったい何なのかを……」
身を乗り出してくる宇宙人に……
無念、そこで目が覚めてしまった!
目覚まし時計が鳴り渡る。この時ほど、目覚まし時計を憎いと思ったことはない。
物語のプロローグでしかないこの夢……続きはいつ見られるのか?
それは僕にも判らない。
貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。