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アニメ「夏目友人帳」を見ていて……

 

 僕の愛するアニメの一つとして、「夏目友人帳」という作品がある。
ジャンル的には「妖怪モノ」だが、妖怪退治がメインではなく、妖怪との触れ合いという……なんとも心温まるアニメなのだ。


 メインキャラである「ニャンコ先生」などは大好きだし、登場人物も心やさしく、見ていて清々しい。一話完結が中心だが、中にはかなり文学的な、余韻に深みのある内容もあって印象に残る。

 まあ、有名なアニメなのでご存知の方も多いだろうし、仔細は省くが……闊歩する妖怪達は一般には目に見えず、主人公の少年にだけ視認できるという設定である。

 だからこそ、周りから見れば少年の言動は不気味でもあり不穏ともうつるのだろう。

 僕自身、子供時代、なにも妖怪が見えたわけではないが、今にして思えばそれに類する出来事もあって、少しばかりアニメの主人公に共感する向きもあるのだ。

 そう。僕は小学生の頃、「ガラス割り常習犯」と囁かれていたのだ。
というのも、やたらと窓ガラス等が割れている現場に遭遇し……もとより僕の仕業ではないのだが……これを目撃した教師や生徒から、僕が犯人と疑われる事態があったわけである。 中には、そんな現場など目撃したはずもないのに、僕が割ったと主張するようなご注進ゴマスリ生徒もいて、つい胸ぐらを掴んだこともあったが……結果は完全に裏目で、いっそ犯人と断定されたほどであった。

 これは僕の憶測なのだが……「ガラス割り常習犯」という謂れ無きレッテルは、中学に上がってからも入れ墨のごとく効力を発揮し、一年の時、下駄箱近くの網入りのかなり厚手のガラスが割れていて、これが又もや、僕が犯人と断定されてしまったののだ。
 今でも覚えていて、夕方近くあたりには誰もいなかったのだが、たまたまガラスが見事破壊されているのを目撃……まあ、すぐに報告すればよかったのだろうが……僕としては、「すげぇ!」とつい感心して見詰めてしまったのだ。
 なにせ、近くに大きな石が転がっていて、その割れ方も劇的ともいえる凄まじさだったのだ!
 どうやら、この現場を誰かに目撃されたらしく……僕は翌日庶務課の担当者に呼び出されるはめになった。
 
 当時の僕は……小学生時代に散々教師からの「イジメ」に慣れっこで……もしかしたら態度も些かふてぶてしかったのだろう、相手は弁明など聞く耳持たず、かく宣ったのだ。

「あのガラスはかなり高価なものだ。お前みたいな貧乏人の家庭では弁償出来ないだろう!」

 ついては、自分がやりましたという反省文を書けば許してやると……

 母子家庭の僕にして、家に迷惑をかけるは忍びなく、少なくとも「泣く泣く」ではなかったが……不貞腐れ気味に、嘘の供述書を認めさせられたのだ。

 もしかしたら、妖怪の仕業ではなかったのか?

 もとより腹の虫はおさまらない。 

 ……それからほぼ一年後のことである。やりもしないガラス割りの犯人にでっち上げられた腹いせとして、僕は、本当にガラスを割ることを決意したのだ。

 とはいえ、さすがに網入りの高そうなガラスではなく、一階の確か技術家庭の教室の、ありふれた窓ガラスを石でたたき割ったのだ。
 当然、夕暮れ時で辺りに人影はなかったが……実は、一人僕の友人が側にいて、たぶん、唖然としたことは予測がつくが……僕はそのまま、何事もなかったように当の友人と共に学校を後にした。

 幸い、この友人は僕をチクるようなことはしなかったようだ。

 さて、翌日の朝礼である。校長が開口一番、

「昨日、技術家庭の教室の窓ガラスを割った人間がいる。素直に申し出ないならば、その生徒は将来大悪党になるだろう!」

 僕は、嘯いたものだ。

「ふん、なってやろうじゃねぇか!」

 不思議なことに……以来、僕に取り憑いていた妖怪は完全に姿を消したらしい。

 話を「夏目友人帳」に戻せば、なんでも7期開始が決定したらしい。楽しみである。

 それにしても、当アニメで主人公夏目貴志の声優、神谷浩史さん、ニャンコ先生役の、井上和彦の実力には感服する。
 絵に魂をぶち込める……彼らこそ、本当の「妖怪」なのかも知れない。

 
 

貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。