好きな色は何?
好きな色は何? ……と聞かれたなら、大抵は「黒」と答えていたものだ。
実際のところ、黒のセーターしか着なかったこともあったし、財布、ベルト、スマホ、万年筆、サングラスのフレーム、自転車、ワッチキャップなどの帽子も黒が基調になるし、サコッシュの類いのバッグも黒である。夏は暑いので敬遠するが、Tシャツも黒、今では下駄箱の肥やしながら、ドクターマーチンの黒のブーツ、ジーンズも黒のスキニー……
とはいえ、改めて考えてみると……つい見上げる上着などは、緑系、特にミリタリーがかったオリーブグリーンが好きらしい。そう言えば、ギターのストラップもオリーブグリーンだし、万年筆のインクも目下はモンブランの「アイリッシュグリーン」と言う奴だが、この変に若々しい緑は好きでは無く……以前は「レーシンググリーン」という渋めの色があったらしいが、廃盤とあって……気に入ったオリーブグリーンのインクを探している最中である。
そう言えば、黒ずくめにオリーブグリーンの上着、その分「差し色(近頃聞かなくなった?)」にはチョイ派手目でアクセント……というのがかっての僕のファッションの基本だったようだ。
色による性格占いみたいなのもあるらしいが、元来興味もなく……ムカツク結果でも出てきたらシャクなので、調べたことはない。
もとより、先のインク同様、全般的に「緑」好きというでもなく、油絵の具の「ビリジャン」なんかは好きとは言えない。やはり、ちょっと渋めがいいのだ。
だからといって、一般に「カーキ」とか「アースカラー」とか言われる、枯れ葉的な色も叉、あまりそそられない。
やはり、オリーブグリーンが止めなのだ。鮮やかな緑に、黄色が混ざるわけだが……実は一筋縄ではゆかない。
我が愛する「苔」などはオリーブグリーン系のファッションで年中過ごしているようだが、ちょっと機嫌のいい時に伺ったことに……
「色彩とは光の戯れである。即ち、色というものは、小賢しい人間の想像の世界にしか存在しないものだ。ゆめ忘れるな! この色キチガイめが……」
つい、お叱りを蒙ってしまった。
いずれにしても、深緑から淡い黄色までのグラデーションを考えても、そう単純な色の組み合わせではそれを表現は出来そうにない。明るさの異なる茶系の色味なんかも当然入ってくるし、ほんのわずかの濃淡でニュアンスも全く別物になってしまう。
実際のところ、もし「どんなオリーブグリーンが好き?」と訊かれ、カラーチャートなど突出されても……たぶん迷ってしまうことだろう。
もとより妥協的に「オリーブグリーン系」の色は日常に取り入れてはいるが、本音で言うなら……どこにも存在しない色を求めているのかも知れない。
確かに、色彩というものは……本当はどんな色なのかは断定出来ないだろう。同じ色でも朝昼晩の光源によっても表情は変わるし、自然光以外でも、蝋燭、ランプ、白熱電球、蛍光灯、LED……そしてメーカー別……かてて加えて、各人の視覚機能……気分、体調、……等々。
やれやれ、人間の限界を改めて痛感てしまう。人類が「神」を想定した理由も分かるというものである。
色に限らず、人間というのは……世界の本当の姿をシカと見ることは出来ないらしい。
それとも……案外……、「神の目」を以て、世界の本当の姿なんかを見てしまうと……そこで人類の打ち止めになるような……
もしかしたら「苔」の奴は、そう言いたかったのかも知れない。
貧乏人です。創作費用に充てたいので……よろしくお願いいたします。