08003
本。読書とその周囲の記録/土星の環
走り書き。時に日記。テキスト的な何か。 (スペイン語+日本語)
映画の話。
地下を歩いた天使の足音と言葉を辿る散歩の記録
出会ったから、寂しいので、出会わなかったら寂しくはないのだろうかといったら、寂しくなかったら出会わなかったのだろうから、どっちにしてもやっぱり寂しいのだと思う。それならやっぱり、出会った方がよかったのだ、きっと / “All of Us Strangers”
(それは)情熱であり平熱、のようなこと。もうすぐ訪れる五月の緑の、鮮やかさと静けさのように。
あたたかく湿っていて寂しくて、冷たく青い夜の淵をずっと歩いていたような気がする、昨日の夜本を閉じて明かりを消したときから、ではなくて、もう随分と長い間。それは雨なのかもしれなくて、それなら、雨の話をすることと愛の話をすることはそんなに離れていることかしら、などと思う。
まだ見えない朝が近づいてくる音を聴きながらその残りを、眠りたいような夜もあって、窓を開ける。それはもしかしたら、鳥の声。それはもしかしたらこれから降る、雨の匂い // 夜の終わりに
起きたこともこれから起こることも、何一つ奇しくはないということが奇しくて、でもそれは最初の一度だけ、だったのだと思う。答え合わせのようだけど答え合わせのようにつまらないことではなくて、偶然と偶然、必然と必然、または偶然と必然あるいはその逆の出会い(の連続)。毎回同じで毎回新しい。
昼間外に出たらいたるところに明るい緑が溢れていてそれがもう「五月の緑」なことに衝撃を受けた。ついこの間まで入口を探していた春の、もう出口のあたりにいるらしい。入口と出口しかないような空虚な春の白く乾いた光の下で途方にくれる、昼下がりの歩道で、(四月七日)
冷たく甘い/香りだけがまるく残っていた/木蓮の樹の下/雨の跡 // 散歩
薄曇りの春の夕方。なま温かな弱い風の中に遠くの街の匂いを探す。「離れていても寂しくないよ」っていつか言える日が、来るのかな。荷物はいつだって少ない方で今も鞄の半分は空っぽだけれど、それは二つの故郷の街への距離がいつもそこに、入っているから、かもしれない、かもしれない。
約束はしない、という(最)上級の約束。
だからあの、高すぎない屋上からの夕陽の空がとてもよかった。さざ波のように優しいオレンジ色に染まった街が海のようにどこまでも、続いていくように見えたから。
1月9日。いろいろな、おそらくたくさんのものを多少の抵抗、それは他者のものだったり自分のものだったり、に合いながらも手放していったら静けさが戻ってきた。それでずいぶんとよく、聴こえるようになったのだと思う。光の音色。一番先に戻ってくるのは陽射しの色らしい。長い冬の終わりが始まる。
1月1日。夜と入れかわりに街から出ていくところらしかった雨と、頬のあたりですれ違いながら少し早足で映画館に向かう。鳥がたくさん出てくる映画を観た。
寂しさも哀しみも、長い旅路の同伴者。あなたはどうしてそんなに寂しそうな目をしているの?と一度だったか、それとも何度かあったことなのか、言われたことがあるけれど、それはきっともうずいぶんと長い、終わらない旅の中にいるからだと思う。旅人どうし、またいつかの半分の月の下で会いましょう。
12月30日。どこまでも(その中を)泳いでいけそうな青い夜は漂流者にはちょうどよくて散歩が長引いたものだから、予約してあった映画に行きそびれてしまった。春の海のような夜に包まれて年末の買い物で賑わう街中をあてもなく彼方へ此方へと歩いてやっと静かになった部屋へ帰ってきた。
(その)思い出の中は温かくて、目を開けるとただただ寂しかった。だけどこれには続きがあって、もう一度目を閉じたら、そこは深くて温かな寂しさの海の中だったからそのままそこに浮かんでいたらなんだかとてもよく眠れた、そんな夜だった。目が覚めたら、海は遠くにあって、肩のあたりが温かかった。
あらかじめ印がつけられていた場所、というのがきっとあるのだろうね / (だから)呼ばれたらそこへ、行かないとならないのだと思う / ひさしぶりに開かれる、地図