見出し画像

プールサイド、カップラーメン、ごちそう。

「カツヤのくせに負けてやんの!」
この一言がすべての始まりだった。
水泳の授業で一戸に競争で負けた。去年までは圧倒的にボクが勝ってたのに。
悔しいから、こっそり担任の白河先生にお願いして、放課後誰もいなくなってからプールをあけてもらった。白河先生が体育の先生でよかった。
先生にはタイムも測ってもらった。なんとかして水泳の授業が終わるまでに、一戸のタイムを抜きたい。そう思って今日もここにいる。
「カツヤ、今日はあと一本でおわりにしよう」
白河先生の一言で一気に体中の血液が熱くなる。水をかく腕の感覚がだんだんなくなり、ボクは泳いでいるのかわからなくなった。
ぷはっと水中から顔をだすと、白河先生が笑顔で親指を立てていた。
「カツヤ、ちょっと待ってて」
プールサイドでタオルを羽織って待っていると、数分後、白河先生が両手に何か持ってきた。その何かからは、ほんのりと湯気が出ている。
「はい。カツヤの好きなカレー味やる」
プールサイド、カップラーメン、ごちそう。
ボクはこの味をずっと忘れないだろう。

#小説
#黄本
#LOFT
#ショートショート
#夏
#プール
#水泳
#カップラーメン
#7月8日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?