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彼らの勇気が仇

 第二次世界大戦の始まりから、終戦の後始末までがジロー・マット・ヘンリーの青春期である。舞台は、アメリカ合衆国。もっとも大きな要素は、戦争である。また、彼らの共通点は日系二世である。


 当時、自由の、また移民への最大のチャンス(生活の場)がアメリカであった。かつてのブラジルや満州の如く(ここでは侵略の概念を外す)。しかし”12・8”が、決定的に運命を変えた。
 アメリカにおけるマイノリティーとして支配される社会集団と見なされるようになった。貧困でありながらもひたすら働く:ジローしかり、地元密着型小売店の息子:マットしかり、エリート教育学びつつあったヘンリーしかりである。
 彼らは、紆余曲折がありながらも、支配される側に踏み込み自己実現の生き様を選択した。それは潮流であり、選択の結果でもあった。優秀な彼らは、駄目もとの作戦に巧みに利用される。運よく成功する。
 しかし、結末は彼らのボディーは壊れ、魂は消えた。文中、侵略に成功した地域へ、いち早くジープで駆けつけるのは、白人将校たちであると記されている。まさに、社会構造の仕組みを裏打ちしていると感じました。
同じ時代に・同じ苦労をしながらも、その後楽しく老後生活を送った人も少なくはないはずである。では何故、彼らは…。私は、彼らの勇気が仇になったと思いました。(Amazon書評に加筆)

かわせみ

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