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銀河の片隅で(ショートストーリー)

ただただ、宇宙は広い。こんなお話はいかがでしょうか。

銀河の片隅に青い小さな星がありました。
小さな星はひとりぼっち。
少し離れたところに赤い星があるのですが、赤い星はずっとどこか遠くを見ているままで、一度だって小さな星の方に顔を向けてはくれません。
小さな星の周りに赤い星以外の星は見当たりません。

小さな星は時々歌を歌います。流れ星達が通り過ぎる時、歌を歌いながら落ちていくのです。その歌を小さな星は覚えているのです。

小さな星が歌を歌えば、赤い星が一緒にハミングしてくれる事があります。
そんな時、小さな星は嬉しくて、赤い星に話しかけますが、赤い星はやはり答えてはくれないのでした。

そんなある日、一人の男の子が現れました。
現れたというより、乗り物に乗ってやって来たのです。男の子は緑色のジャンプスーツを着ています。男の子が乗って来たのは、まあ、地球でいうところの自転車に一番近いでしょうか。やはりギコギコ足で漕いでいるように見えます。

「初めまして、ボクはトト。不思議ドライバーです」
「こんばんは。不思議ドライバーって何?」
「もちろん、不思議な運転手。ボクは星達のための引っ越し部門で働いています。ご用があると伺いましたけど」

その時、赤い星が向こうを向いたまま手を振りました。
それに気づくと不思議ドライバーは小さな星に頭を下げました。
「あ、間違えました、申し訳ありません」
そう言うと、不思議ドライバーは赤い星に向かいました。

赤い星さん引っ越ししちゃうんだ。ボク、本当にひとりぼっちになっちゃうんだ。たとえ、お話ができなくても赤い星さんが近くにいてくれるだけで、どんなに心強かったことか。

小さな星は悲しくなりました。涙が後から後から流れてきました。泣き声もだんだん大きくなっていきます。
小さな星が泣いたのは初めての事でした。

泣き声を聞きつけて、不思議ドライバーのトトが駆けつけました。
「どうしたの?なぜ泣いているの?」
優しく聞いてくれました。
「赤い星さん、遠くに行ってしまうんでしょ?」
トトはにっこり。
「赤い星さんは、引っ越しで不思議ドライバーを呼んだのではないよ」
「本当?」
「そうだよ、赤い星さんは君の方に自分の顔を向けて欲しいそうなんだ。
だから、君にそれでいいか聞いて欲しいって」
「本当⁈嬉しいよ!」
「だけど……赤い星さん、お話できないんじゃないの?君にはお話してくれるの?」

トトはまた、にっこり。
「ボクは不思議ドライバーだよ。僕たちは、いろんな言葉も心の中のつぶやきもわかるんだ。だから君も、ボクに用がある時は『不思議ドライバーのトト、来てくれ』って心の中でボクを呼べばいいよ」
「不思議ドライバーってすごいね」
トトは「えへん」と言ってウインクしました。

「じゃあ。赤い星さんの顔を君の方に向けるよ。君も手つだってくれる?」
「いいよ、ボク頑張るよ」

トトは小さな星に一本のロープを巻き付け、トトの乗り物に結びました。弾みで遠くに飛ばされないように。トトの乗り物は赤い星を押します。
不思議ドライバーの乗り物はさすがのパワー。
少しずつ赤い星は小さな青い星の正面に向き始めました。

初めて見るお互いの顔。
なんだか恥ずかしいような嬉しいような、小さな青い星はドキドキしました。赤い星さんはとても優しいお顔でした。赤い星さんは綺麗な声でハミングを始めます。
トトが通訳してくれました。
「私は言葉がしゃべれないけれど、あなたの歌が大好きです。これから仲良くしてくださいね」
「ぼく、ずっとお友達になりたかった。こちらにお顔を向けてくれてありがとう。ハミングが赤い星さんの言葉だって知らなかった」

トトが言いました。
「ハミングの言葉、少しずつ覚えればいいよ。気持ちが繋がっていたらできるはずだよ」

赤い星さんが、ハミングを始めました。小さな青い星は最近、流れ星さんが歌っていた歌を歌い始めました。赤い星さんも覚えていたのです。
それにトトも歌い始めました。
とても素敵な時間です。

ただね、トトの歌はね、ちょっぴり音が外れていましたけれどね。

おしまい 
1654文字


たまには、宇宙物を書きたいと思い書き始めた。書き終わったのがコレ「宇宙物かい」と、自分で突っ込みましたが、イヤイヤ宇宙物ですよね?



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