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ショートストーリー

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#140字小説

くつした 140字小説

ねえ、おばあちゃん くつしたが片方ないの よく探してごらん 眼鏡を掛けながら おばあちゃん 下着用の引き出し 何度も見たの おばあちゃんも探してくれた タンスに入れる時 確かにあったよと言いながら あら こんなところに おばあちゃんが見せてくれた おじいちゃんのパンツ パンツの中から私のくつした こんにちは 140文字 久しぶりの140字小説です。 #140字小説 #ショートストーリー

結末(140字小説)

ある日、天国を見学。 案内人は醜く年老いた女。 天国には不似合い。 別の日、地獄を見学。 案内人は私好みの男。 あの案内人にもう一度会いたい。 私は生き方を変える。 悪行三昧の日々。 これで彼に会える。 そして、最後の日を迎えた。 彼に会えるのだ。 私は天国の案内人になっていた。 間違えたのは私か神か。 🐈‍⬛ 私はどっちに行くかしら。両方無いのかもしれないけれど。 全く考えられない場所かな。良いところだったらいいな。 何も無い方がすっきりするかな。 ねえ、あなたと

方言(140字小説)

どもども、めいで〜す。 みなさん、機嫌よ〜してはります〜? なんか、季節がようよう動き始めましたな。 腰の重い夏もやっとこさ帰り支度して、ほんでも名残り惜しそうに帰りはったがな。やれやれでんなあ、ほんに。尻の長い御仁は嫌われますやん、惜しまれるうちが花やて、はよ気づいてもらわんとなあ。 本物の関西人の方、ごめんなさいね。私にはどこがオカシイのかさえわかりません。関西の地域によって、関西弁は違うとは聞いていますけど。 まあ、同じ日本人ですので、たいていの意味は分かりますが。微

怖い顔(140字小説)

怖い話を書いた事が無く、一度チャレンジしてみようと思い書き始めた。 一晩、頭を抱えたが夜が明けた。 ふと見た鏡の中で怖そうな老婆が私を睨みつけている。 鏡が故障! 鏡の設定は可愛い乙女のはず。業者を呼ぶ。 鏡の業者はお詫び方々、山姥の顔の需要に応えてくれたら高額なお礼を約束すると申し出た。 🐈‍⬛最近、白雪姫の継母の気持ちが少しわかる気もするような、しないような。鏡って正直すぎて嫌いです😮‍💨  めい #140字小説 #山姥

アイスクリーム(140字小説)

アイスクリームを二つ買った。老夫婦の楽しみ。 食べようと冷凍庫を開けたら、二つとも無くなっていた。 アイスクリームを三つ買った。今度は食べられる。食べようと冷凍庫を開けたら、三つとも無くなっていた。 私は頭の黒い、いや、白いネズミを退治した。 明日はアイスクリームを一つ買う。 楽しみだわ。 甘いものは苦手ですが、アイスクリームはいただきます。特にハーゲンダッツが好き、ですが、ちょっとお高い。なので、自分を褒めたい時、元気づけたい時、ミニカップを購入します。時々の特別感を

話し相手(140字小説)

話し相手がいなくなった。仲良くしていた人達は転勤族の人ばかりだったので、気づいた時は友だちが一人も残っていなくて。メールやラインの交流も今では途切れたまま。気づけば私は一人ぼっちだ。 誰かとお茶したい、食事会に参加したい。何よりお喋りの花を咲かせたい。さて、探しに行かねばなるまい。 転勤族の友人が多かったのは本当ですが、今では年齢のこともあり、子どもさんとの同居や諸々の事情で引っ越しされる方も増えてきました。 現在はnoteの記事を、読ませて頂いたり書いたりと結構楽しんでい

友人(140字小説)

「あらあ、随分久しぶりね。あなた古希を迎えたんですってね。おめでとう。だけど、こう言っちゃあ何だけど、化粧くらいしなきゃダメ。 あ、私、来月、還暦なの」 久々に会った友人の弁。私の事、少しは覚えていてくれたんだ。 彼女は、女性に手を引かれて施設に帰って行った。 彼女は中学のクラスメイト。 🔷フィクションです。 学校のクラスメイトだった人は、まあまあ近くに一人いるだけ。 多くは生まれ育った福岡在住。 駅などでバッタリ学生時代の友人に出会うことは無い。時々そんな光景を見

残るもの(140字小説)

愛を失くしたら 心を満たすものが無い。 友を失くしたら 思い出が消えた。 体が重くなったら 夢を失くした。 笑顔を忘れたら 希望が消えた。 コロコロ回転しながら 落ちていく。 行き止まりはあるの? 目は回らないが 記憶が消える。 まだ失うものはあるのか。 私は誰。 ここはどこ。 立ち上がり考える。 考えるって何? 年齢を重ねると、得るものも多いが、失くしてしまうものは、はるかに多い。 人生は足し算と引き算。確かに掛け算と割り算はかなり少なかったような気がするが

無駄なプレゼント(140字小説)

古希にICカードが送られてきた。送付したのは国だが、何に使えるカードか説明は皆無。問い合わせてみた。 「今にわかりますから楽しみにしていてくださいね」と優しい声のエンドレス。 ずっとワクワクして待っている。もしかしてワクワク感だけのプレゼント?カード作成にも千円くらいかかるのよね? 古希に国からICカードは届きませんでしたが、市から市内だけ割安で乗れる路線バスの交通カードが送られてきました。来月から使えます。ウフフです。 #140字小説 #ショートショート #ICカード

かなちゃん(140字小説)

通勤時、花屋の前を通る。 店の前を掃除している彼女。 花屋の店主は「かなちゃん」と呼んでいる。彼女についての情報はこれだけだ。 「おはようございます」 「おはようございます。いってらっしゃい」 彼女の声は私に元気をくれる。元気メーターはMAXだ。ぼくは背筋をピンと伸ばす。 今日も頑張れるぞ。 こんな些細な出来事が、毎日の自分を支えてくれている気がします。 私にとっての優しい出来事。 時々出会う、ボウヤとお母さん。 ボウヤは、私に出会うと手をニギニギにして、パイパイして

知らない街(140字小説)

通い慣れた道を歩いていた。立ち止まれば見知らぬ街。最近、時々迷子になる。しばらくすると思い出せたが、ここは全く覚えのない街だ。知らない街に少しずつ夕焼けが広がり始めた。ここはお前の原風景なのだと何かがそっとささやく。 夕焼けの真ん中で、私はこの街から永遠に抜け出せないと思うのだった。 元々私は方向音痴。 それが最近では知ってる通りでも、一瞬迷う事もあります。 先日、隣町の入り組んだ住宅街で散歩中、その界隈から出られなくなりました。 まあ、どなたかに尋ねる事もできるので、問

可愛い(140字小説)

私は美人でも無いし、可愛げも無い。 鏡を見てはため息。 それなら、見なければいいと思うのだが。 「おじいちゃん、私、可愛い?美人?」 祖父は困り顔で返事をしない。祖父は嘘をつけない人。 その代わり、私の良いところをイッパイ見つけてくれる。そんなおじいちゃんが大好きだし、可愛いと思ってるの。 私の四人の祖父祖母は、明治生まれでした。 遠方に住んでいた事もあり、話をする事はあまりありませんでした。それでも私に会うたびに、何度も何度も可愛いと言ってくれた事は、記憶に残っています。

春の色(140字小説)

ねえ、おばあちゃん。春の色って何色だと思う? 赤紫が透き通りそうなくらい薄い色かな。メグちゃんの春は何色? 私はね、緑色を薄くした色かな。 それもいいね。緑のそよ風が吹いてきそうだよ。春の花もスタンバイしているみたいだね。 春の花の色はどれだけある? 何でも知っている春風に聞いてみようね。 春や春、花咲く春❣️ 春の花で私が一番好きなのは、ネモフィラです。 もう少し先ですかね。青い色が素敵です。 オオイヌノフグリと親戚なのかな? #140字小説 #ショートショート #春の

引き出し(140字小説)

古い棚の一番上の引き出しが開かなくなって久しい。歪みによるものだろう。 母は言う、多分大事なものが入っていたと。 私も全く覚えていない。 それが無くても困った事は無いと母は話すが、何か引っかかるようだ。 棚を買い替えた。 古い棚の引き出しが、弾みで開いた。 中にあったのは、私の臍の緒だった。 臍の緒は、母と子の最初の絆。 結婚した時、夫の母に一番最初に頂いた?ものが、夫の臍の緒。これ、どうすれば良いのかしら? 私のものは、すでにありません。 #140字小説 #引き出し