ドイツで大学と大学院に進学。30代の奮闘記。今、振り返って。
縁があり、28歳で渡独した(ことの顛末は下の記事をご覧ください)。今日は、ドイツの大学と大学院に正規留学した8年間を振り返ろうと思う。当時は命懸けで勉強した。卒業だけを目指して。ドイツの大学は入学は易しいが、卒業が難しいのだ。29歳で大学に入学、大学院を卒業したのは37歳だ!卒業してから10年、今あの頃のことを振り返ろうと思う。これでドイツでの進学にちょっとでも興味をもってもらえれば嬉しい。
日本ではあまり知られていないが、ドイツの大学&大学院は基本的に無料だ。医大でも、音大でも(その分税金は高いのだが)。高卒で、ドイツ語力があれば、基本的に誰でも大学に進学できる。しかも最近は英語だけでOKの修士課程なども増えてきている。だから選択肢の一つとして、ドイツでの進学を考えてみてもいいと思う。ドイツでオススメの学科は音楽、哲学、医学、工学、神学、経営学、情報学などなど。大人の留学だってお薦めだ。
私は1年間ゲーテ・インスティトュートなどの語学学校に通い、29歳からドイツの大学に進学した。さっきも書いたが、ドイツの大学と大学院は無料(現在は州によっては、EU外の外国人は授業料ありのところもある。それでも日本より全然安い。)で、ビザも長く出るのが魅力だったのだ。日本の大学を出てはいたが、新しい専攻を学ぶため、29歳で、またゼロからのスタートだった。学部での主専攻はドイツ語・ドイツ文学、副専攻は英語・英文学にした。
ちなみにドイツの大学に入るために入学試験は存在しない。当時はDSHというドイツ語の試験をクリアーすれば、もうOKだった(今は違う名前のドイツ語の試験がある)。1年間語学学校でドイツ語を勉強したら、その試験に受かるぐらいにはなった。しかし問題は入学してからだった。最初の半年は、講義には出ても、まったく教授の話している内容がわからない!それは当然だ。日常会話だって、テレビのニュースだって、まだ全部理解できないドイツ語力なのだ。それで講義が理解できるはずがない。初めは頑張っても、半年間で2つの単位をとることだけで精一杯だった。
それでも続けていれば、だんだん要領がつかめてきて、徐々に単位もとれていくようになった。でも試験に合格するためには、普通のドイツ人の3倍は努力する必要はあった。言葉のハンディがあるから、試験勉強するのも、発表するのも、レポートを書くのも、本を読むのも、全部時間がかかるのだ。だから在学中の8年間は週末も、夏休みもなく、ずっと勉強し続けていた。
そもそもドイツの大学を卒業できる割合は低いのだ。学科によっては入学者数の3分の1しか卒業できないところもある。入学した半分の学生が卒業できたら、その学年はいい方だったりする。学生は学費を払っていないので、お客様じゃないし、サービスもほとんどないし、「勉強しない人は来ないで結構です」というスタンスなのだ。特に初めの1年では落ちまくる。入学試験がない分、そこで落としているのかもしれない。
特に外国人はビザがかかっているので、プレッシャーは相当なものだった。試験に落ちるとビザの延長ができず、強制退国につながるのだ。そうやって泣く泣く国に帰った友達を何人も見てきた。そして同じ試験は人生に2回しか受けられないという決まりがある。まれに特別許可をもらって3回受けさせてもらえることもあるが、それは例外だ。2回落ちたら、退学または専攻を変えないといけない。夜に試験に落ちる夢を見て、何度もうなされた。パジャマで強制帰国させられるという夢だ(笑)。
親には「30にもなって、仕事も結婚もせずに何やってるの」と言われるし、自分でもそう思うし、本当に厳しい環境だった。でも、逆に難しいからこそ、火がついた。人間面白いものである。「入学したからには卒業してやる!」と思った。ドイツでは「卒業してなんぼ」なのだ。ここでは中退は何の意味も持たない。そのうち韓国人の友達ができて、一緒に励まし合いながら、がんばった。戦友だ。それに親切なドイツ人の友達が試験前に家に招んでくれて、教えてくれたりした。当時の彼氏にも本当にお世話になった。レポートのネイティブチェックをしてもらったり、口述試験の練習の相手をしてもらったり。みんな、どうもありがとう(涙)。
おかげで4年ちょっとかかって無事に学士を取得できた。でも、大学で常勤講師として働く希望を持っていた私は、最低でも修士の学歴が必要だった。それで修士課程に進んだ。今度は「外国語としてのドイツ語」を専攻した。将来ドイツ語教師になるための学問だった。私にとっては「ドイツ文学」より面白くて、最新の外国語教授法を学ぶことができた。修士になって、やっと勉強が面白くなった。本当は2年で終わるコースを3年かけて卒業した。
最後の卒業前の口頭試験の時のことをよく覚えている。30分かかって、二人の教授に質問攻めにされる試験だった。試験が終わって、試験結果を待っていたら、先生が部屋から出てきて、「おめでとう」と言って握手してくれた。それを聞いた瞬間、涙がドドーと出た。卒業できた瞬間だった(ドイツの卒業は皆一斉ではなく、一人ずつのタイミングなのです)。ついにやり切った!
あれから10年。卒業して何年かは目標がなくなってしまい、目標ロスのバーンアウト状態だった。でも修士の学位を取得できたおかげで、今の職場に就職もできた。あの8年間は辛かったが、今となっては素晴らしい経験をしたと思っている。難しいことを乗り越えられたことは私の誇りだ。学生の気持ちもよくわかり、今の仕事に役立っている。
人生100年時代。生涯勉強ですよね。こちらでは、定年退職してから、大学生になる方も多いです。ぜひ、みなさまもドイツへ勉強に来てください。お子様を留学させるのもいいですね。苦しいことばかり書いてしまいましたが、世界一流レベルの教育を無料で受けられるなんて、素晴らしいことだと思いませんか?それにいろいろな人種の人たちがいて、ダイバーシティを肌で感じられますよ。
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