ブラックボックス化していたクラス

ベテラン保育士でも大変なクラス

ある年度初め、4月に入ってすぐ、幼児クラス担任のM先生と仕事終わりにおしゃべりをしていました。

M先生は30代後半で、他施設でも経験があるベテラン保育士です。新しい知識を積極的に保育に取り入れる柔軟性のある先生でした。
M先生とは『発達問題』についてよく意見交換をしていました。

『ツヤ子先生、うちのクラス、子ども達が落ち着かなくて大変なんです。今度、様子を見てもらえませんか?』と、M先生。
百戦錬磨のM先生が『大変』なんて、よっぽどのことが起きてると推測されました。

『いいよ、いいよ、明日、タイミングが合えばいくね。』と、ツヤ子。

落ち着かない子どもたち

翌日、ツヤ子はM先生のクラスにおじゃましました。
子ども達が全体的に落ち着きがないのがすぐにわかりました。

  • 絶対に自分が1番ではないと泣き出す子。

  • ただただ玩具を踏んだり、投げたりして『きぁ〜』と、叫んでいる子…。

  • お友だちにベタベタ過剰なスキンシップを求める子。

  • 担任にひたすらスキンシップを求める子。

  • 指しゃぶり、爪噛みする子、陰部を触っている子。

  • 気持ちを制御できず、自分の頭やお友だちを叩き出す子…。

  • 一つの遊びに集中できず、お友だちの遊びに次々とちょっかいを出し、嫌がられるのを喜んでいる子…。

子ども達同士のトラブルを防ぐために、M先生も色々工夫しているのはわかりました。(教室を区切って遊ばせる、移動はトラブルになりやすい子を先にするなど)
しかし、クラスの半数以上が何かしらの『落ち着かない行動』があるため、追いつかない感じでした。


『何か』が違う

『ツヤ子先生、このクラスの子達、発達障がいでもあるのでしょうか?』と、M先生。
『発達障がいねぇ…。それより、この子達、何か不安がってない?あと、注目されたがってない?』と、ツヤ子。

実はツヤ子、20代の頃(大昔ですが…)、療育センターに勤務していました。その時関わった発達障がいのお子さんと比べると『何かが違う』というのがツヤ子の印象でした。(←これについてはツヤ子なりに調べたので、いつか書き残します。)


何故、今わかったのか?

『M先生、この子達、去年もこんなに落ち着かなかったけ?』と、ツヤ子。

M先生は困った顔で、
『前担任からは色々問題はあったが、解決できた、という申し送りだったんです。しかも、前年度、このクラスは担当する保育士が固定されていたから…。正直どんな保育をしていたか知っている職員は少ないんです。』と。

(保育士が固定されている?)
ツヤ子の保育園はシフト制。(ツヤ子だけは固定だけど…)
担任は固定だが、フリー保育士は色々なクラスに入っているようにツヤ子には見えていた。(←鈍感🤣)
でも違っていた。

保育感の対立が職員の分裂へ

よくよく話をきくと、保育感の違いから、職員から『アノ人とは仕事をしたくない』と、いうリクエストが入るらしい。そして、その要望に応えるようなシフト調整、担任人事が行われているそうだ。
つまり、気の合う同士で保育をするような環境を作っているらしい。

(職員が助け合うどころか、分裂してる…。それって、危なくないか?)と、ツヤ子は思いました。 

何故かというと、まじめ強め保育士の厳しい指導が頭をよぎったからです。

もし、まじめ強め保育士が集まって、厳しい指導がエスカレートしたらどうなるのか…?

『助けて!』と、言えない赤ちゃんはどうなるのか?

何故、保育感の違いを話し合いで解決しようとしないのか?

これでは学校生活でよくあるグループ外しのようではないか?


クラスのブラックボックス化

『それって、クラスがブラックボックス化してない?私は結構怖いことだと思うよ。』とツヤ子。

『私もどうしたらいいかわからないんです…。このクラスの子ども達を見ていると、何が正しくて、何が間違えているかもわからなくなってきました…。』と、M先生。

安全装置がない 

保育感の対立が職員の分裂を招き、クラスをブラックボックス化する。行き過ぎた指導をチェックし、止める仕組みがない保育現場。
バラバラの保育感を話し合うことですり合わせようともせず、合わない職員を排除していく人間関係…。その上、保育技量の不均衡からくる仕事量の不均衡…。

(そりゃあ、みんな辞めていくよ…。)と、ツヤ子は思いました。 
何より、子ども達を守る安全装置がないことが不安でならない…。

果たしてこの状況をどう打開するか?
M先生とツヤ子の模索は続きました…。



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