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祝いのことば

乗車するはずの新幹線が運休になり、
乗車券の変更カウンターには、
まるで夏休みのディズニーランドのような行列。

なかなか進まない行列に、
イライラする気持ちが滲み始めた頃、
友人から一通のメッセージが届いた。


『婚約しました。早く伝えたくて、LINEしました』


メッセージを読んだ瞬間、
ただただ不快だった駅の行列の中で、
隣に並ぶ初めましてのサラリーマンに、
思わずハイタッチでもしたくなるほどの、
喜びが溢れる。



彼女は、私の心からの友人である。

明るくあっけらかんとした言い方で、
相手の欠点を指摘できる天才だ。
彼女には、お世辞という概念がない。
そして、言わない。という選択もしない。
伝えるということに関して、
とても真っ直ぐで、誠実な人間なのだ。

18の頃、私の初舞台を観に来た彼女が、
「出演者の中で1番下手くそだよね。
でも頑張ってるのはよく伝わったよ。」と、
はっきり言われたことは、今でも忘れられない。
初舞台の初日にそんな事言ってくれるなよ!と、
文句を言いたくなったものの、
あっけらかんと、帰っていく後ろ姿に、
しかし、嫌味をこれっぽっちも感じなかった記憶が、今でも強く残っている。


そんな、彼女が、婚約した。
ミラクル ドキドキ ウキウキ トキメキ ハッピーハッピー!!!である。

なかなか動かない新幹線に、
この夏の帰省を諦めかけてたが、
いや帰らねばならぬ!今すぐ会いたい!と、
再び、乗車への熱意が奮起した。

それからというもの、
なかなか動かない行列も、
蒸し蒸しとした不快な暑さでさえ、
なんだか愛おしいような気がしてくるんだから、友人の結婚というのには、
とてつもないパワーがあるもんだ。


その後、新幹線に乗れたのは約6時間後なので、
彼女の自宅に着く頃は、既に深夜だった。
が、玄関を開けて、
久しぶりに見る彼女の瞳からは、
幸せがこれでもかと、溢れており、
その顔が見れてよかったし、
諦めずに会いに来て、本当に良かったと、
胸がいっぱいになった。



どんなに、遠く離れても、
直接、伝えたい言葉がある。
直接じゃなきゃ、伝えきれない想いがある。




友人へ。
東京駅の雑踏の中、
ただただ最悪だった1日が、
あなたのメッセージひとつで、
最高の1日になりました。


どうか、どうか、その幸せが、
永遠に、続きますように。

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