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おこめのおはなし~その2・どうして『お米』なのに『おコメ』なの?

 いつ頃からでしょうか?
 新聞や雑誌、TVやインターネットなどの報道で『米』が『コメ』と記載されるようになったのは?

 なぜ、『コメ』なのでしょう?
 同じく主食として食卓にあがるパンと、カタカナ表記で合わせるためでしょうか?
 それなら、『コメ』ではなく『ゴハン』と記載されるべきではないのかな? とわたしなどは思うのですが……。

 パンは、ほぼ小麦が主原料なのはみなさんもご存じのとおりです。
 しかしながら、『小麦』が『コムギ』と表記された記事は、今のところ目にしていない筆者です。
 もしかしたらあるのかもしれませんが、『コメ』という表記ほど一般的に浸透はしていないのではないかな? という認識をしています。


 さて、このお米ですが。
 二千年以上まえにこの日本列島にもちこまれてから、日本人の主食の座をまもりとおしています。

 特に日本人の食以上に深く生活に根ざしている証としては、戦国時代から江戸時代にかけて、各大名の力を示すのに、人口でも、面積でも、黄金の質量でも軍隊の強さでもなく、『石高』といってお米の生産能力で測っていたところにある、と個人的に思っています。

 ちなみに、戦国末期から江戸時代初頭、米の一石で成年男子一人の一年分の米の消費量とされていたらしいです。(諸説あります)
 一万石で『大名』を名のれていたので、ようは一万人をかかえられるだけの能力があれば『大名』として幕府に認められていたわけですね。
 もちろん一万石の収入があったからといって、かならずしも一万人を養えていたわけではありません。
(むしろ、表面上と実質との乖離に大名は頭を悩ませ、幕府から押しつけられる手伝普請に苦しめられたといってよいのですが、今回はこちらのおはなしは主軸ではないので割愛いたします)
 ですが税収入能力イコールで、ざっくりと経済力と人口を掴み、しかも目にみえてわかりやすい数字として覚えておける、日本ならではの勘定のしかたではないでしょうか?

 前置きが長くなりましたが、みなさんは農家、特に米農家に対してどのようなイメージを抱いておられるでしょうか?


 一番思い浮かぶのは、きっと、『米農家、と言うだけで政府から援助を受けている』なのではないでしょうか?

 スーパーなどで特売のお米を買おうとしますと、たいてい10キロの袋詰めのもので最低3,000~4,500円とかしていますね。今は、いわゆる『コッソリ値上げ』が主流になってきておりますので、10キロではなく8キロでお値段はすえおき、みたいなのが主流になってきてるように思います。


 一俵は60キロですので、単純計算で20,000~24,000円ということになります。


 そうすると、当然こういう考えがうかんできます。

 一俵20,000円、ということは、途中、いろんな問屋さんや流通過程を通すにしても、農家さんへ支払われるお米の値段は、18,000~20,000円くらいしてるんじゃないの?


 田んぼ1枚で10俵とか15俵とかお米がとれてたら、最低でも18万ももうかるの!?

 え、ちょっと、信じられない! ソレって、ものすごいボロもうけじゃない!?


 それなのに、政府に泣きついて援助うけてるのって、おかしくない!?


 なんでお米農家だけこんなに保護されてるの!?


 保護する必要なんて、ないんじゃない!?

 だいたい、今の農家って兼業農家がほとんどなんだよね!?


 普段は会社いってお給料もらってて、片手間でお米つくるだけでこんなに稼いでるんだからさ、農家さんじゃなくってさ、もっと別なことにお金を使おうよ!


 被災地や、地震や台風なんかで被害を出した農家さん優先に保証していったほうがいいよね!?

 といったあたりが大方の感想なのではないでしょうか?

 しかし、本当お米農家は儲かっているのでしょうか?
 ならばなぜ、近年、荒れ果てた耕作放棄地や後継者不足などが、農家の問題として、定期的にニュースなどで取り上げられるのでしょうか?

 ではここで、兼業農家である我が家を実例としてあげてみましょう。
 我が家は、1町(田んぼ1枚を1反として1町は10反)ほど所有しています。

 しかしながら、毎年赤字続きでボーナスなどで補てんしても追いつかない状況です。
 1町も田んぼを所有してないても、お米の収入は80万にも満たないのが現状です。

 何年かまえに、時の首相が『米百俵の精神』と声高にさけんでいたことがありましたが、覚えておいでのかたはいらっしゃるでしょうか? 農家のかたほど『け~っ』と思って聞いていたのではないかな、と思っています。

 米百俵。

 このあたりでは、手取り100万円程度にしかなりません。

 1年間、まるまる田んぼにかかりきりの作業の末に手にしたお米が百俵だとしたら、およそ年収100万円。
 いわゆる『103万円の壁』と取りざたされている一般的なパート収入程度にしか、ならないのです。

 これでどうやって生活していけるというのでしょうか?
 なので多くの稲作農家さんは兼業、つまりサラリーマンなどになって主たる収入源を他にもつしかないのです。
 そうでなければやっていけないのです。

 お米は日本人の心のよりどころ。
 精神の礎。
 アイディンティティである、などとよく言われています。

 ですが稲作に従事している多くの兼業稲作農家の現状は、赤字続きの経営を身銭をきって補完して、その上でほぼボランティア活動状態でお米を生産しているのです。


※ 手伝普請についてのWikipediaです・参考までにどうぞ ※


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