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停電四夜親しみゐたり虫の闇

火曜日にやってきた台風21号の影響で金曜日まで四日間,、私の住む地区は停電となってしまいました。
市内各地で広く停電していたため復旧には時間差があり、夜、外出先から帰ってくると私の住む地区だけが街灯も消え、暗く沈んで廃墟のように見えました。
「ただいま。」と真っ暗な玄関に入り、小さな非常用のLEDを点けてリビングへ。
見慣れたはずの部屋も四隅に闇がよどんで、どこかよそよそしい雰囲気です。

でも…
エアコンが使えないため窓を開けると、少し離れたお隣の窓にもキャンプのような小さな明かり。
同じく窓を開けているために、ご家族が何か楽しそうに話している声が、夜の闇を通じて聞こえてきます。
一緒に秋の虫の声も、いつもよりはっきりと多重奏のように響いてきました。

私が子供の頃はまだエアコンがめずらしく、夏になるとどの家も網戸にして窓を開け放していました。
ざっくばらんな土地柄だったので、おばちゃんが子供をせかす声やおじちゃんがお風呂で演歌を歌う声、食器のかちゃかちゃいう音までが私の家の中に聞こえてきて、それが日常の当たり前の風景でした。
今はどの家もきちんと窓を閉めてエアコンをつけるので、なんだか町そのものが息を潜めているようで、私には少し息苦しい感じがします。

停電の夜、窓の外から聞こえてくる音たちは、懐かしい子供の頃の記憶を呼び起こしてくれました。
LEDの青い光に沈んだ部屋で、ひとり温かな気持ちになりました。


#日記 #エッセイ #写真 #俳句 #停電 #台風 #秋

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