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大好きだけど会わない

わたしには父親くらい年の離れた友人がいます。海外の人で日本語はしゃべらないけれど、日本が大好きで渡航が可能な時は年に3回くらい日本に来ます。仕事を通して知り合って、声をかけていただいて、友達付き合いするようになってからもう10年くらいです。とても成功した科学者で人柄も素晴らしい。一緒に時間を過ごすと、とてもユーモラスで、時に深い話をできるので、自分が浄化されるのです。

私はその人を先生と呼んでいて、先生と知り合えたことは英語を勉強した中でも一番大きな報いだったと感じるほどでした。でも、今回、来日するとき、わたしは先生と会うのを断りました。しばらく考えた後お断りしたのです。

「私はあなたとお会いすることがいつもうれしく、楽しいけれど、会う準備が大変すぎて時折便利屋のように感じてしまいます。だから、今回は会うのをキャンセルします。これからも連絡はとりたいし、またいつか会いたいと思います。」

そう伝えました。だんだんと先生と会うための段取りが楽しめなくなって、
いつかやめるときがくるなと思っていたのです。線引きというか、人付き合いにもここまでならばできる、これ以上はやらない、というのがあると思います。おつきあいがその線を越えたのでした。先生はメッセージを理解してくれたようで、日本にきたら電話すると言ってくれました。

わたしと先生が友達付き合いをしているのを不思議に思う人も何人かはいました。私はいまでも先生に友情を感じます。でもだからこそ、自分が無理をして会うのはやめようと思ったのです。美味しい食事のごちそうと引き換えに日本でのお世話をする、そう考えるようになってしまったら、対等な友情とは言えません。自分の尊厳のためです。それでも友情が続くならば、対話は続くし、いつか、ご一緒する機会もあると思います。今年の夏のひとつの決断でした。

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