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コロナで変わった、生産者が求められる「価値とニーズ」に気づくべき:都市づくり5.0のヒント



こんにちはnoteメンバーシップ:ツギ・マチ・ラボ(次世代の都市・街づくりラボ)を運営する松岡です。今回はコロナ禍で変化した生産者へのニーズに焦点を当てました。よろしくお願いします。


内容:Ⅰ生産地大変 / Ⅱ 消費者に届く工夫・届かない工夫/ Ⅲ 生産者の特徴や価値を見える化する工夫


Ⅰ 生産地大変

⑴ 生産地の様々な工夫が届かない訳

コロナ禍に伴う「飲食店への自粛要請」は、高級食材を中心に全国の生産地を直撃しています。昨年度の農水省の生産者交流ネットワーク事業を少しお手伝いし、全国の水産物の生産者の声を聞く機会がありました。

日本全国で本当に様々な水産物が生産されている事、それぞれの漁業者が丁寧な仕事を施している事、しかし流通する上で付加価値として反映されていない事などが実感できました。

例えば長崎はフグの生産地で下関のフグの大半は長崎発である事や、データの上では「氷見のブリ」に匹敵する旨味を持つブリが取れる事、真牡蠣と岩牡蠣の両方を養殖できる数少ない生産地である事、などなど非常に恵まれた水産物の生産地なのですが、市場を経由すると「量」だけが重視され、きめ細かな「質」の情報は東京の消費者に届いていません。

同様にオリーブ、ハーブ、夏香など工夫を凝らし「フルーツ魚」と言われる養殖ハマチなども、その差異に気づく消費者は少ないようです。

同じく船上〆し、丁寧に血抜き処理された魚も漁協を通してしまうと一括評価になってしまいます。


⑵ 飲食店向けと消費者向けの違い

従来は(高級)飲食店が、調理人のこだわりを表現するために、産地や処理の方法を吟味して仕入れてきました。

生産者の様々な工夫を、差異化の価値として支えてきた飲食店ニーズが無くなり、百貨店やスーパーの店頭に並ぶと、都会の消費者の情報不足により、工夫と差異化の価値が、殆ど認識されなくなってしまったのです。

非日常機会として飲食店に求める「食材の質」と、日常機会の中で家庭において求められる「食材の質」が違うようです。生産者と消費者とを繋ぐ仕組みの前提が変わったのです。


Ⅱ 消費者に届かない工夫、届く工夫

⑴ 消費者に「食文化」を届ける

食文化の仲介者としての「飲食店」が無くなり、「食材」に求められる「質」が大変化しました。どのような「質」が消費者に届くのでしょうか。

安さが分かり易いですが、それ以外では「家庭で手間なく楽しめる本物の味」ということではないでしょうか?例えば福岡県糸島の牡蠣業者が販売する「ガンガン焼き」は、殻付きの冷凍牡蠣が缶箱に入って届きます。家庭ではそれを缶箱ごとコンロに乗せ、指示通りのお酒と水お入れて蒸し焼きにすれば、殻付き牡蠣を味わえると言う工夫です。

これまで飲食店で食べるモノというイメージの殻付きの牡蠣が家庭で手軽に食べられるのです。他にも「マダイと牡蠣と野菜のスープ煮」や「タコブツと茹で汁と調味料付きにタコ飯の素」なども人気だと言います。


⑵ 日常に求められる「わかりやすい価値」

従来は飲食店で料理人が①捌き、②下拵え・仕込み、③調理していた工程を、家庭で再現することは技術的にも時間的にも難しいわけです。

消費者に直接届けるには、①②を済ませ③の手間のみで楽しめる「魚料理のミールキット化」が必要なようです。他にもそのままリゾットに活用できそうな「骨まで柔らかい干物」もわかりやすい価値として魅力的でした。

このように家庭向けに対応するには、従来のように新鮮に届けるだけ、生産者の「こだわりやストーリー」を表現する工夫だけでなく、「手間なく楽しめる」「わかりやすい新機能」に向けた「食商品化」を工夫する必要がありそうです。



Ⅲ 生産者の特徴や価値を見える化する工夫

⑴ 超・情報洪水の中でのブランディング

前述した「食商品化」の工夫だけではなく、「こだわりやストーリー」を表現したい場合には、消費者向けのブランディングを工夫する必要があります。

ブランディングというと「〇〇サバ」などの産地ネーミングを思い浮かべますが、このような「オラの街の魚が一番」的発想では、消費者に伝わらないと考えるべきです。

まちづくりや産地活性化の現場でよく「情報発信力の不足が課題」を言われますが、これは相対化できず思考停止していると言えます。

米国調査会社IDCは2010年の世界の情報総量を約1ゼタバイトと算定しました。(佐藤尚之氏談)1ゼタバイトとは「世界中の砂浜の砂の数」に相当するそうです。それが2020年には35ゼタバイトに増大しているそうです。

このほとんど無限とも言える超・情報洪水の中で、個別に特定のメッセージを発信して、それが届くと考えることに無理があります。トヨタやソニーの商品メッセージが届いているのは、毎年5000億円近い広告予算を投入しているからで、大企業と同列になれるはずがないのです。


⑵ 食のコンテンツとして届ける

単に「発信しています」という事実で満足するだけでなく、「届けるため、見える化する為」の工夫が必要なのです。

見える化して行くには、例えば同系の魚とのグルーピングによる存在感の発揮とその中での格付けが必要になります。サバであれば、まず九州全体、四国全体でその食べ方などを研究・普及させて行くのです。その上での食べ比べ体験(イベント)などを通して、その違いや調理法との向き・不向きを確認して「星や格付け」をして行くような相対評価と戦略性が必要です。

グルーピングによる存在感の底上げと、格付けによるわかりやすい指標づくりが必要です。「俺が一番上手い」と言っているだけでなく、野球やサッカーがリーグ・チームのファン化を経て、選手個人のファンを育てていくのと同様のプロセスです。いずれにしても一生産地だけでなく、連携活動・チームアクションが必要な時代だということです。


【 都市づくりヒント:チーム&格付けによる相対評価の必要性】

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