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ゾンビのように生きる vs 魂を燃やし尽くして一日一日死ぬ

『よっす。おひさー。元気?』 
先日、二年ぶりに、古い友人からLINEがきた。 
 
「元気っす。そちらさんは?」 
おれも返信し、おたがいの近況を報告しあう。 

二年前、友人は転職した。 
正社員として15年ほど大手の飲食チェーンに勤務していたが、内部で孤立。 
うつを発症し数か月休職していたが、新しく建築系の会社に入社した。 
一方、おれはというと、10年務めた漫画のアシスタントを事実上クビになり、ハローワークで得た倉庫の仕事で食いつないでいた。実家では、姉がガンになり闘病中。 
 
二年前は二人ともどん底で、気軽に話せる知り合いもいなかったため、お互いマメに連絡しあい励ましあったものだった。 
 
「売れました?家」 
『なんとか契約は取れたよ。着工はまだだけどね』 
 
地主にアプローチし、 
「余っている土地にアパートを建てて有効活用してみませんか?」と提案する―― 
そんな営業の仕事をしている彼。 
このご時勢、家のような高額商品はそう簡単に売れるものではない。 
加えて、当たりのキツイ上司と、アラフォーの新人を見下してくる年下の同僚。 
そんな厳しい環境に耐え、真っ黒に日焼けしながら一軒一軒まわっては断られてを繰り返し、契約を勝ち取ったのだから、大したものだ。 
入社した多くは、一棟も売れなくてだんだん会社に居づらくなり、一年経たずに辞めていくらしい。 
 
『コロナの影響で、働き方が難しくなった。家が売れないと会社には残れないし』 
「厳しいっすね」 
『そっちは?まだア●ゾンかい?』 
「体に限界がきて、転職しましたよ」 
 
長時間労働の影響で足と肩に地雷を抱えていたおれは、アシスタント時代のコネを利用し、派遣事務員に転職していた。 
 
『コロナ前で良かったね。今は余計に厳しいよ、転職』 
「展望はあるんですか?将来の」 
『ないなあ。ずんさんは確か、イラストレーターだったよね?』 
「イラストはお金にならないので凍結中ですね」 
 
タイミングを見計らって、姉の死を報告した。 
学生時代、彼はおれの家によく遊びに来ていたので、姉とは少し面識があった。 
暗い雰囲気を引っ張りたくなかったおれは、ポジティブアピールをして話題を逸らした。 
 
「休日は何をしてるんですか?」 
『そんなに変わってないよ。筋トレをちょっとしてるくらい』 
「そうですか」 
『ずんさんは? そもそもア●ゾンの時より休みは増えたの?』 
「休み自体は減りました。でもデスクワークですし、基本やることもあまりないので、体的にはめちゃめちゃ楽になりましたよ」 
 
その後、おれが休日にはビジネスの勉強をしていると答えると、そのことを突っ込んで聞かれた。 
 
『頑張ってますな。お盆も仕事なんすか?』 
「そうですね、インフラ系なので」 
『なるほど…。でも▲▲ガスに就職できたのすごいよね。俺、ぜったい受からないよ』 
「コネですよ。いつまで契約してくれるか分からないし」 
 
「あまり元気そうには見えないですね」 
『あー俺?確かに元気いっぱいではないかな』 
『職場変わったんだよね。宇都宮駅周辺に。んで、課員3人しかいなかったんだけど、2人とも辞めちゃったんだ』 
『残ったのは、俺ひとりだね』 
「……」 
 
友人の言葉が、脳内にリフレインする。 
『俺、ぜったい受からないよ』 
『残ったのは、俺ひとりだね』 
『俺、ぜったい…… 
…… 
 
気になったので聞いてみた。
「何の勉強もしてないんですか?」 

『? 何が言いたいの?』 
「なんか、『俺には無理』とか『俺しか残ってない』とか、ネガティブな発言が気になったので。これから上がってやるぜ!みたいな前向きな行動してないのかなって」 
 
…… 
 
『確かにそうだね。気を付けるよ。今日はありがとう。またね』 
 
気まずい雰囲気が流れたまま、LINEは突然終了した。

(同じことを繰り返してるな……) 
友人は前職のときも、飲食の仕事にしがみつき、転職することなど微塵も考えなかった。 
最悪だ最悪だ、と何度もグチるだけで行動しなかった。 
彼は怖がりで、保険がないものにはいっさい挑戦しない。 
勇気をもたず、ひたすらしがみついた挙句、同僚との不仲からうつになり、飲食の仕事を強制終了せざるを得なかった。 
 
真面目に働くことしか知らなかった。 
他人を信用していなかった。 
外の世界を勉強しようとしなかった。 
 
休日には、ストレス解消で風俗に行ったり、無課金のゲームで暇をつぶしたり。 
果てには、彼女を雑にあつかい、100万円を勝手に引きだされ刑事事件寸前まで行きかけた。 
学生時代にあったずば抜けたひょうきんさや面白さは、かけらも無かった。 
 
「なんで、人生を変えるために努力しないのか…」 
不思議でならない。 
常識の枠の中でしか幸せになれないのなら、 
レールの上からはみ出した瞬間GAME OVERなら、 
そんな人生なんて楽しくないし、苦しいだけだ。 
 
漫画のアシスタントをしていたが、 
みんなお金がないなりに自分の好きなことをして、生き生きと暮らしていた。 
毎週徹夜して、床の上でいびきをかいた。 
徹夜明けの疲労とハイテンションが入り混じった状態で、美味しい食事とお酒を囲んだ。 
面白さとは何か議論が白熱しすぎて、ギスギスもした。 
多くが結婚もした。(おれはしてない…笑) 
先生は魂を燃やして漫画を描いて大成功して、その姿に感動し、勇気をもらった。 
アシ仲間の中には、頑張って連載しているやつもいるし、2018年度に日本で最も売れた本を描いたやつもいる。 
 
だから、 
ゾンビのように生きているだけの友人の姿が信じられなかった。 
能力は低くないのに。
 
二年前にも、今の仕事に希望が持てないなら、もう少し行動を起こしたらどうかと彼の尻をたたいたつもりだったが、とくに変わってはいないようだ。 
 
正直、落胆した。 
 
自分にもっと行動力と実績とノウハウがあれば、真剣に耳を傾けてくれたかもしれない…… 
不甲斐なさ・無力感に唇をかんだ。 
 
以上。 
モヤモヤに引っ張られたくないので、記事にして切り替えることにしました。 
 
まあ、いったん友人のことは忘れて頑張るしかないっすね。。 
そこに気を取られちゃっても仕方ないしね!

とりあえず、、
良い人生を歩むには、まわりの人、環境が大事。
エネルギーがだだ下がりするような職場は、すぐに変えたほうがいいでしょう。

ってことでまとめっぽくしておきます。

ご精読いただき、ありがとうございました!

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