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二年次研究:ハウルの動く城の家族形成(1)


こんにちは!

二年次にて、私は「”家族”における共通要素とは何か:ハウルの動く城の分析から」というタイトルで研究報告書を書きました。

「どんな研究か興味がある!」と言ってくださる方が存外多かったので、今回noteにてざっくりとまとめたいなと思います!


投稿を分けて掲載しようと思うので、今回は「はじめに」「先行研究1」「シーン分析」の三つをまとめたいなと思います。


ではさっそく◎


1.そもそもこれはどういう研究なの?

 みなさんは「家族」というとどのようなイメージを浮かべますか?

「近代家族の閉鎖とあるべき〈家族〉の形」(2016 小泉)という論文の冒頭に、ある大学で行われた面白い調査が記載されています。

ある授業の履修生に「家族とは何か、自分で考えたように、定義しなさい」と問いかけ、その返答で学生たちが思い浮かべる「家族像」を調査しようというものです。


すると、「自分で考えたように」という指示があったにも関わらず、学生達は非常に似通った回答をしました。

すべてを引用はできないのですが、論文では以下のようにまとめられています。

「家族とは男女の両親と子どもからなる小さい集団であり、心の絆で結ばれており、信頼し、支え合う、あたたかな場所であるということ」


もちろん全ての家族がこうではありません。

しかし、みなさんが「家族」と聞いて思い浮かべるのも、恐らくはこのような家族イメージなのではないでしょうか?


私はここで、学生たちが共通した家族イメージを抱いていることに興味を持ちました。

それと同時に、このような家族像ではないにも関わらず、自分たちのことを「家族」と主張する国民的にも有名な集団がいることを思い出しました。


それが、スタジオジブリ作品「ハウルの動く城(2004)」の登場人物達です!(全員映った公式画像がありませんでした…)

彼らは誰一人として血縁になく、また婚姻関係でもありませんでした。
しかし、作中繰り返し「家族」というワードを発しているのです!

この気づきをもとに、
「彼らにとっての”家族”にある共通要素は何か?」「彼らはどのように家族形成したのか?」という研究をしてみよう、と思い立ったのが今年度研究のきっかけでした。



2.「家族」ってなに?

「家族」についての研究をするにあたり、まずは日本で形式上定義されている「家族」について調べてみました。

調べたところ、現時点で「家族」というものは法律で規定されていないようです。しかし、民法においては様々な規定がされていました。

「配偶者、父母及び子並びに配偶者の父母」(雇用保険法)
「配偶者、直系尊属、直系卑属及びこれらに準ずる地位にあると認められる親族」(関税定率法)

さらに、ブリタニカ国際大百科事典では

「婚姻によって成立した夫婦を中核にしてその近親の血縁者が住居と家計を共にし、人格的結合と感情的融合をもとに生活している小集団」


民法においては目的に応じて、柔軟に「家族」定義が為されているようです。
しかし共通して言えることは、やはり「血縁」「婚姻」というものが「家族」定義において重要だ、ということです。

しかし、「ペットも家族」という時代なので、これはあくまで"形式上の"家族です。

認識上の家族についての先行研究は、次回掲載します(とても面白い先行研究でした!)


3.「ハウルの動く城」のどのシーンのこと?

 それでは、いったいどのシーンで「家族」というワードが出ているのかを時系列に追ってまとめていきたいと思います。

深追いするともっと「これって家族っぽいよね」というシーンがあるのですが、ジブリ愛が溢れてしまいそうなので、論文に記載した代表的な部分だけ紹介していきます。笑


⑴ハウル「我が家族はややこしい者ばかりだな」(映画1時間17分地点)

まずはこのシーン、映画中盤でハウル達がお引越しをするシーンです。


この場にはハウル、ソフィー、マルクル、カルシファー、荒地の魔女、ヒン、呪われたカカシのカブのフルメンバーが居ます。

※荒地の魔女はこの時点では魔力を奪われており、この時点ではハウル達の間で「おばあちゃん」的なポジションです。
ヒンはマダム=サリマンの付き犬で、宮殿からソフィーに付いてきました。


引っ越しをするあたり、カブの呪いが強すぎたため連れて行けない、と判断した後に、
ハウルが「我が家族はややこしい者ばかりだな」と発言します。

ちなみにこの後ソフィーが顔をしかめる描写があるのですが、「我が家族」ではなく「ややこしい者ばかり」で顔をしかめています。

ソフィーも自分たちが家族であるという認識には違和感がなかったようですね。



⑵ファニー「ソフィー!私再婚したの。…またみんなで暮らせるわ!」(映画1時間27分地点)

ふたつめは、ソフィーの母・ファニーが家出したソフィーの元を訪ね、ソフィーが老婆の姿になった以来初めて再会するシーンです。

「家族」というワードが出てくるわけではないのですが、面白いシーンなので紹介します。


ファニーは映画中このシーンで「お金持ちの人と再婚した」と発言しています。ソフィーの反応を見るに、ソフィー達は母子家庭だったのではないかと分析しています(これは次の投稿で分析を掲載します)。

その後「またみんなで暮らせるわ」と、ソフィーに対し共住提案をします。


しかしソフィーは、「今の暮らしが気に入っているから」と母の共住提案を断ってしまうんです。

私はこのシーンを、ソフィーが「血縁の家族か、そうでない家族か」を自らの意志で選択したシーンだと捉えました。

結果的にソフィーにとっての「家族」は、血縁関係は最重要要素ではなかったということになりますね。



⑶マルクル「僕ら、家族?」ソフィー「そうよ、家族よ。」(映画1時間30分地点)

これが二度目の「家族」発言です。シーンとしては、先ほどのシーンの直後になります。


ファニーが帰った後、マルクルは突如とした母親の登場や戦争で疎開していく人々を前に、

「ソフィーも本当はここを出たいのではないか?」と不安を覚えます。

そんな不安をソフィーに対し、「行かないで!ここにいて」と吐露するんです。

その時に、どこにもいかないというソフィーの返答を聞いて「本当?…僕ら、家族?」と聞くというのがこのシーンの流れです。これに対しソフィーは「そうよ、家族よ」と返します。

マルクルが「よかった!」と顔をほころばせる様子を見ても、マルクルもやはり自分たちを「家族」と認識しているということが分かりますね。しっかり「僕”ら”」と複数形にしているところもポイントです。



今回はこのあたりにしておきます!

次回の投稿で、本研究の核とも言える
「各キャラクターの生い立ち調査・分析」、「先行研究2:認識上の家族」を掲載したいと思います。

キャラクターの生い立ち分析は、映画のみならずハウルの動く城の原作小説を読んで分析しているので、ぜひ見てほしいです…!



ここまで読んでくださり、ありがとうございました◎近いうちにまた投稿します~!


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