僕はこれから旅に出る。 とてもとても、短い旅に。 七月。東北本線の座席、黒のG-SHOCKに目を落とす。午前11時。涼しい。 意味も無く眺めていたスマートフォンをポケット…
五月。心地良い揺れに微睡んでいると、無機質な女性の声で目が醒める。 「まもなく、新宿御苑前です」 そうだ、僕はここで降りるんだ。 大学には行かず、また、今日も。 …
深夜行性
2020年4月13日 20:50
僕はこれから旅に出る。とてもとても、短い旅に。七月。東北本線の座席、黒のG-SHOCKに目を落とす。午前11時。涼しい。意味も無く眺めていたスマートフォンをポケットに仕舞い、車窓を見遣る。畑と山が広がり、蹴飛ばしたら倒れそうな小屋が偏在している。それだけだった。それでも、夏の訪れを感じさせる何処にでもある青い風景、縁もゆかりも無い土地の退屈な風景は見ていて楽しかった。しかし、そうではな
2019年12月6日 15:41
五月。心地良い揺れに微睡んでいると、無機質な女性の声で目が醒める。「まもなく、新宿御苑前です」そうだ、僕はここで降りるんだ。大学には行かず、また、今日も。僕はボーリング球を持ち上げるように、項垂れた頭を上げてから立ち上がると列車を降りた。平日の昼間のプラットホームには、携帯を耳に当てたサラリーマンと余生を謳歌している老人達があった。僕はそれらを避け、慣れた足取りで階段を登り、改札を通