深夜行性

三田の大学生です。書き物をしています。twitter: https://twitter…

深夜行性

三田の大学生です。書き物をしています。twitter: https://twitter.com/Shin_yakousei

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たとえ最初で最後の夜でも—①さらば—

僕はこれから旅に出る。 とてもとても、短い旅に。 七月。東北本線の座席、黒のG-SHOCKに目を落とす。午前11時。涼しい。 意味も無く眺めていたスマートフォンをポケットに仕舞い、車窓を見遣る。畑と山が広がり、蹴飛ばしたら倒れそうな小屋が偏在している。それだけだった。 それでも、夏の訪れを感じさせる何処にでもある青い風景、縁もゆかりも無い土地の退屈な風景は見ていて楽しかった。 しかし、そうではない運転士にとって、この風景はどう見えてるのだろうか。やはり退屈だろう。 電車が

    • 芝生と彼女とショートホープ「一面の青」

      五月。心地良い揺れに微睡んでいると、無機質な女性の声で目が醒める。 「まもなく、新宿御苑前です」 そうだ、僕はここで降りるんだ。 大学には行かず、また、今日も。 僕はボーリング球を持ち上げるように、項垂れた頭を上げてから立ち上がると列車を降りた。 平日の昼間のプラットホームには、携帯を耳に当てたサラリーマンと余生を謳歌している老人達があった。 僕はそれらを避け、慣れた足取りで階段を登り、改札を通り抜けた。 出口を抜けると、気持ち悪いくらいに強い陽射しが僕に振り返かり、思わず

    たとえ最初で最後の夜でも—①さらば—