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もしかしたらそっちのラインも

 最近実家では両親が終活とばかりに家の片付けに精を出している。

 そんな片付けの途中で幼い頃の私のアルバムが出てきたそうだ。

 たまたま昨日実家による用事があったので少しその古いアルバムを見せてもらった。

 何せ四十年以上前の写真なのですっかり退色して時代を感じさせた。

 今でこそどこにでもいるすっかりくたびれた中年のおじさんだが、幼い頃は近所でも評判の可愛らしさだったと母は事あるごとに懐かしそうに語る。

 写真に写っている当時の私はパッチリ二重で顔も幼いなりに整っていて髪の毛は亜麻色で見ようによってはまあ可愛いという部類に入るだろう。

 兄は初孫だったので写真の量はかなり多いが翌年に産まれた私の写真のボリュームの方が上回るくらいである。

 少々かび臭いアルバムをめくっていくと途中のページから急にスカートを履いた私の写真が並びだした。

 髪の毛も少し長めで上目遣いでレンズを見ている姿は幼女に見えないこともない。

 何でも母は二番目の子どもはどうしても女の子が欲しかったらしく健診でもこの子は女の子ですよと告げられていたらしい。
 
 昔の事でもあるしエコー検査の精度もいまいちだったのかもしれない。

 その話を聞いて有頂天になった母は私が産まれる前から女の子の服を買い漁っていたそうである。

 いざ出産となってポンとお腹から出てきたのが男の子だったのであれまあとなったそうだ。

 どうしても女の子が欲しかった母は私が赤ちゃんから幼児になると買い置いてあった女の子の服をとっかえひっかえ着せ替えては写真を撮りまくった。
 
 そして結構本気でこの子を女の子として育てたいと思っていたらしく言葉遣いなども女の子らしいものを使うように躾けていたそうだ。

 私が拙い言葉でおかあしゃん、あたちおはながだぁいしゅきとか言うともうたまらなかったらしい。
 
 その頃の育児は昭和らしく父は基本的にノータッチだったので母のいいように育てられていたみたいである。

 しかしあんまりにもナイーブで少女趣味な私の振る舞いに疑問を感じた父がたまたま私の女装写真を発見してから母の目論見はもろくも崩れ去った。

 その頃から記憶にぼんやりとあるのは男は男らしくあれと言う厳格な父のスパルタ教育で男性的な性格になるように矯正された。

 それでも染みついた性分と言うのはなかなか抜けなかったらしく幼稚園で一緒に遊ぶのは女の子の方が圧倒的に多かった。

 おままごとやお人形遊びをするとやっぱり楽しかった。

 小学校にあがっても二年生くらいまでは女子と遊ぶことが多かった。

 しかしだんだん自分の中で男の子の心が目覚めだして、丁度その年頃くらいから男女の違いを意識するようになり次第に男の子とばかり遊ぶようになっていった。
 
 それからはみるみるうちにどこにでもいるハナタレ小学生男子になった。

 さすがにその頃になると母も私の女の子化計画を諦めたらしく普通の男の子として接するようになった。

 もしそのまま育てられていたら今頃は男性を好きになって全然違う人生を歩んでいた可能性もある。

 ズボラな母はその辺りの事は想像していなかったみたいである。

 とはいえ、きのう何食べた?のシロさんとケンジのような生活も決して悪くないと思う。

 今の人生は最愛の妻と暮らしているので最高に幸せであるが。 

 あどけない顔でスカートのすそを掴んでいる三歳ごろの私はチャーミングなんだなこれが。

 とまあ、そんな古い記憶は置いておいて昨日の晩御飯の話をば。

 昨日はいい天気で気分が良かったのでちょっと奮発。

 近所の魚が美味しいお店で鯛の刺身をサクで買ってきた。

 地元の海で捕れたばかりの桜鯛である。

 まずはこれを刺身に引いた。

 他のおかずは鶏モモ肉を一口サイズに切り分ける。

 キャベツをざく切りに。

 フライパンに油を敷いて鶏肉とキャベツを一緒に炒める。

 鶏肉に火が通るまで火加減は中火でじっくりと。

 味付けは塩麹。

 これで鶏とキャベツの塩麹炒めの出来上がり。

 もう一品はオニオンスライスに鰹節を乗せてポン酢をかけただけのシンプルなもの。

 後はお惣菜でレバニラ炒めを買ってきた。

 ぬか漬けはキュウリ。

 ようし、簡単にご飯の支度が出来たなと思いつつ妻を呼ぶ。

 いただきますをして乾杯。

 昨日のお酒は発売されたばかりのキリンの晴れ風。

 結構前からコマーシャルをしていたので気になっていた。

 パシュッとプルタブを起こしてグラスにタタンタン。

 グイーッと飲むとふわりとした飲み心地で後味が何ともスッキリしている。

 これはグイグイいっちゃうなとさっぱりとした軽めの口当たりのビールだった。

 ではまずは鯛のお刺身から頂く。

 ワサビをチョンと乗せてパクリ。

 クニクニとした歯ごたえで旨味が濃い。

 鮮度も良くて身がダレていない。

 やはり刺身は自分で引くに限るなと改めて思った。

 妻も気に入ったようでパクリパクリと次々に口に収めていっていた。

 次は塩麹炒め。

 これはもう定番の味、塩麹の甘じょっぱい味とキャベツのシャキシャキした歯応えが楽しい。

 二本目のビールをトシュッと開けてグイッ。

 ううん、なんて飲みやすいんだと改めて思う。

 レバニラ炒めは最近貧血気味の妻のために買ってきた。
 
 少しだけ頂いたが栄養がつきそうな味だった。

 オニオンスライスは今の時期だけ楽しめる新玉ねぎの醍醐味で何度も作る。

 昨日も一玉スライスしたがあっという間に無くなった。

 ぬか漬けを合い間に挟んでまたお刺身に戻る。

 鯛の半身がサクで六百円位だったので絶対にお買い得である。

 いい買い物をしたなぁと大満足でご馳走様。

 それにしても今日は朝から雷がゴロゴロ鳴る大雨でびしょ濡れになってたまらなかった。

 出かける時にだけ豪雨になる現象って経験ありませんか。
 
 建物に入った途端に小降りになるというあれ。

 あるあるなんですかね。

 明日天気になあれ。

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